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俊也side

樹の小さく可愛い寝息が聞こえだした。 寝顔をそっと窺うと、起こさないように注意しつつ額に小さなキス。 「...喉、乾いたな」 「...寝つけないのか?俊也」 ふと目を凝らすと豊がベッドの縁に座っていた。 「なんか飲むか」 「ああ」 涼太も眠っているらしく、2人で部屋を出、階段を降りリビングへ。 サーバーからミネラルウォーターを注ぎ、渡してくれた。 「サンキュ」 「俺も飲もっと。喉乾いてさ。腹は?減ってない?俊也、あんま祭りでも食ってなかったじゃん」 「ん。平気」 「とりあえずソファ座ろうぜ。俺、コーヒー飲も」 「眠れなくならない?」 「はは、ガキかって」 豊はコーヒーマシンでコーヒーを煎れ、ソファの隣に座った。 「楽しかったな」 「ああ」 「にしても」 豊が吹き出した。 「まっさか、俊也が樹に抱かれるとはな」 「あー」 俺もグラスを持って笑んだ。 「実を言うと、さ」 「ん?」 「ここだけの話し、ていうか。樹にはちょっと言えないんだけど...」 「なに?樹や涼太じゃあるまいし、俺はバラしたりしないけど。2人も悪気はないからいいけどさ。 いつも俺、俊也には話し聞いてもらったり相談、乗ってもらったりしてるし」 豊はゆっくり俺の話しを待っていてくれてるみたいだ。 「....ホント言うと俺、樹が初めてじゃないんだよね」 「...え?どういうこと」 「うん...抱くのは確かに樹が初めて。だけど、抱かれるのは、ていうか、...ヤラれんの、ていうか」 「...もしかして、中学のとき、か?」 「ああ。所謂、集団レイプ。空き教室やら放課後の教室の隅だとかさ」 そこまで話すとミネラルウォーターで喉を潤した。 「涼太と父親の件とは似てるようでたぶん違う。抵抗する気もなかったし、涙も出はしない。面倒だし、さっさと済ませろ、て。 当時は所詮、セックス、としか思わなかったし。 でもその過去のお陰で、樹を大事にしないと、て、迂闊に手を出したら駄目だ、て自分に言い聞かせられたんだよな」 「...なるほどな。でも過去から得るもの、て確かにあるよな。俺も以前、涼太を抱いてたときにはなかった感情、ていうの? 今は本当、涼太が好きで。涼太を感じさせたい、てそれだけ。以前は樹を重ねてたりしてさ、申し訳なかったよ、今更だけど」 「うん...でもアレだな。涼太の父親が逮捕される前にどうにかしないとな」 「ああ。逮捕される前に引っ越させた方がいいだろうな...けど、なんて伝えたらいいんだかな、涼太の母親に、さ...」 コーヒーカップに口を寄せながら豊は神妙な面持ちだった。 「...にしても、お前が好きだったその子」 「うん」 「案外、その子が2人を引き合わせた気がしてならないんだよな。入学式に偶然、知り合った、てのも、偶然は必然、とも言うし...なんとなく、運命みたいなさ」 思わず口元が綻んだ。 「...実は俺も。あの子が幸せに導いてくれてる気がする、たまに」 「...うん。眠れそうか?」 「だな、そろそろ寝ないとな、何時だろ」 豊が壁時計を見上げた。 「12時過ぎたとこ」 「そっか。ありがとうな、話し聞いてくれて」 「いや、お互い様だろ。なにかあったらいつでも話し聞くし」 「ありがと」 互いに微笑み、リビングを後にした。

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