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第138話

「ねえ、豊」 「あ?どした?」 「部屋着、貸して?あとお風呂も」 「あー...マジ?脱ぐの?浴衣」 2人のやり取りを眺めながらオレンジジュースを飲む俺と俊也。 「...そりゃ。浴衣のまま寝れないでしょ。お風呂だって入りたいし」 「目の保養になんのになあ...」 「...は?」 「あー、確かに。わからなくないかもな」 俊也も豊に同意見、の様だけど...。 「だよね、わかる。色っぽいもん、俊也」 「樹もな」 涼太の呆れた眼差しが向けられた。 「...だったら2人はそのまま浴衣着てたら?」 俺と俊也は見つめ合う。 「...まあ、ありかも」 「うん」 はあ、と涼太が溜息を洩らした。 「まあ、2人は好きにして。俺は浴衣じゃ落ち着かない」 「しゃーねーなあ。風呂溜めてくるから待ってな」 そうして豊は部屋を出て行った。 涼太から順にお風呂に浸かり、結局は豊からそれぞれ部屋着を借りた。 「浴衣じゃなくて良かったん?」 「んー、まあ」 「にしても、明日どうする?樹や俊也は行きたいとこは?」 「あー、どうだろ...俊也はわかんないよね」 「うん。俺は樹となら何処でもいいけど」 「何処でも、が困るんだよなあ、一番」 豊が頭を掻いた。 「でもその前にさ。寝るとこ、どうするの?この部屋で4人?」 豊に尋ねた。 「他、部屋はあるよ。寝るとき、そっち移動する?ここで寝てもいいけど...2人の邪魔だろうし?」 「えっ、そんな、ね?俊也」 「ああ、さすがにな」 俊也が小さく笑う。 結果、豊の部屋で4人で寝ることにした。 豊はベッド、床に布団が2つ。 「樹と俊也は一緒にな」 「えっ。豊と涼太、一緒じゃないの...?」 「んー...ちょっと、色々ね」 涼太の苦笑に首を傾げた。 「...しかし、2人の隣に涼太、てのもなあ...邪魔なんじゃ?涼太」 「え?あ、そっか。...だったら...豊と寝よっか...あ、変な意味じゃなく!」 「わかってるって」 豊が笑い、布団を捲ると豊の隣に涼太は寝転んだ。 「じゃ、電気、消すぞ」 「うん、おやすみ」 それぞれおやすみ、と口にし、豊が電気を消した。 涼太がベッドに移ったから必然と布団が2つ並んで俺は隣に移動した、んだけど。 やっぱり俊也の布団に潜り込み、胸元に蹲るように横たわったものの、なかなか寝つけない...。 「眠れそう?樹」 小声で俊也が聞いてきた。 見上げたら俊也の瞳と交錯した。 「あ...う、ううん」 「だよな」 「うん...」 「子守唄でも歌う?」 ふふ、と小さく互いに笑った。 背後のベッドの2人は若干、距離を置いて眠っていて、特に声はしない。 と思ったら。 「あ、忘れてた」 唐突に豊が起き上がった。 「どうしたの?豊」 「ああ、いや。アロマオイル忘れてたな、て」 ベッド脇のカウンターに豊はアロマをセットした。 「あ、いい香り」 「んじゃ、おやすみな」 「うん」 そうして...宿題と祭りの疲労からかいつの間にか俺は夢の中だった。

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