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豊の家で

夏祭りを満喫し、 「もう時間も時間だし。俺ん家来ない?みんなでさ」 豊がそう言い、みんなで豊の家に向かった。 「あ、痛」 慣れない下駄で転びかけた。 「大丈夫か?樹」 俊也が肩を抱いてくれた。 「う、ん...ちょっと指が痛い...。擦りむいたかな...」 「鼻緒で指を軽く怪我したみたいだな」 怪我を見てくれた俊也が、 「ほら」 俺の前で座り込んだ。 こ、これって... 「おんぶ」 「や、やだよ。子供じゃないし」 豊の笑い声がした。 「下駄、履けないだろ?恥ずかしがってる場合か」 「俺、下駄持っててあげるよ」 涼太が両方の下駄を持ってくれ、勇気を振り絞って俊也の背中にしがみつく。 「しっかり掴まってて」 ぐ、と俊也は俺を背中に乗せて支えると立ち上がる。 「お、重い、でしょ、ごめん...」 「全然。軽いよ、楽勝」 表情はわからないけど、とても優しい俊也の声に少し安堵する。 「お前もおんぶしてやろっか、涼太」 「は?俺、別に怪我してないし」 「なんならお前もつまずけ」 「やだよ、バッカじゃないの」 俺と俊也、豊まで大笑い。 そうして、豊の実家に着いた。 22時過ぎ。 「両親はわかんねーけど、彰人は寝てるだろうから静かに頼むな」 中学まで訪れたことのある豊の実家はある意味、豪邸だ。 カウンターキッチンもあるリビングには豊のお母さんがキッチンに立っていて、お父さんは晩酌していた。 「あら。樹くん。久しぶりね、大きくなって」 「お久しぶりです」 「浴衣、似合ってるじゃない。涼太くんも」 「ありがとうございます」 俺も涼太も照れくさいながら頭を下げた。 「はじめまして、古閑俊也と言います。三人とは同級生で...」 「俊也くん、ね、はじめまして。浴衣、とても似合ってるわね。ゆっくりしていってね」 「ありがとうございます」 「彰人は?寝てんの?」 「夏祭りから帰ってきて、遊び疲れたみたいよ。飲み物、用意するからちょっと待ってて。冷たい物がいいでしょう?暑かったでしょうし」 「うん、あ、あと、樹が鼻緒で指怪我してさ。軟膏や絆創膏、お願い」 「あらあら、わかったわ。消毒のスプレーも必要ね」 豊のお母さんから4人分のオレンジジュース、消毒液や軟膏、絆創膏をもらい、豊の部屋のある二階へと向かう。 「はい、どうぞ。テキトーに座って」 部屋に入ると豊はトレイに乗せたジュースやお菓子を真ん中のテーブルに乗せた。 「樹、足、見せて」 俺の隣に俊也が来て、鼻緒で怪我した指先を診てくれる。 「染みるかもだけど、我慢ね」 消毒液のスプレーをし、ティッシュで軽く拭うと軟膏を塗り、絆創膏を巻いてくれた。 「これでいいかな」 「ありがと、俊也」 「にしても楽しかったな、夏祭り。涼太の食べっぷりも面白かったし」 「面白かった、てなんだよ。でもさ、夏祭りの出店、てどれも美味しそうだし、実際、美味しいよね!まだ食べたいのあったけど、ギブだったー、お腹きつくて」 みんな爆笑。 「だろうね。かき氷にりんご飴にたこ焼きにわたあめ、あとなんだっけ」 俊也が笑いながら。 「あー、いか焼きにたこ焼き、焼きもろこし。しかもかき氷、また食べてたな」 「味が違うから!最初、いちご味だったけど、マンゴー味だし!たこ焼きは樹とシェアしたし!りんご飴は豊からもらったし!」 豊に反抗してる涼太が可愛い。 「樹も結構、食べてたよな?」 豊に聞かれ、うーん、と思い起こす。 「いちご飴と俊也と交換して食べたかき氷が少しに、涼太とシェアしたたこ焼きに、わたあめと焼きそば...あ、あとキウイ味のかき氷。珍しかったから。俊也はそんなに食べてなかったよね」 「そう?メロン味のかき氷に、りんご飴は樹のを少しもらって食べたけど。豊の食べてたお好み焼き、美味そうだったから、お好み焼き...あと、食いもんじゃないけど、ヨーヨーか」 俊也はヨーヨー釣りもやってた、豊と。 2つ取れたから1つは俺にくれた。 豊は...1つも取れなかった。 俊也が上手かったからか、3回もチャレンジしたのに。 「豊、ヨーヨー釣り。俊也に弟子にしてもらったら?」 涼太が不敵に笑う。 「うっせー。調子悪かったの、今日はたまたま!」 「あー、今日はたまたまねー、はいはい」 豊を除き、みんな爆笑。 「ほら、菓子も食べようぜ。てか、腹は?減ってない?なんか簡単なの作って来ていいけど」 「さすがに今はいいかな」 「あ、樹、浴衣、ありがとうね。おばさんにお礼は言ったけど...クリーニングして返すから」 「いいよ、別に。俺のと一緒にクリーニング出せばいいだけだし。でも明日、なにしようか?」 まさか、翌日も俊也といれるなんて。 豊に感謝だな。

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