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第136話
「樹はりんご飴、もう食べ終わったね」
俊也が俺の顔を軽く覗き込んできた。
「次、なに食べる?」
俊也の瞳を見つめていたら...また突拍子もないことが浮かんでしまった。
浴衣が凄く良く似合っていて、夏美が言うようにカッコいい、そして色っぽくて。
「...俺以外でね」
俊也が見透かしたように笑う。
「なに?なんの話し?」
俊也の斜め前に立ってる豊が尋ねてきた。
豊の正面でポールに寄りかかっている涼太はりんご飴を齧ったまま固まっている。
「...樹からなにか聞いた?涼太」
「えっ、ううん、なんにも」
「樹の家からどうも涼太が変なんだよな。
やたら視線感じるから目を合わせようとすると慌てて逸らすし、かと思ったら、気づかないフリしてたらやたら見てるし、盗み見みたいなさ」
俊也が苦笑した。
「...嘘がつけなくなったっぽいな、涼太」
涼太が狼狽え、俊也は肩を震わせ笑ってる。
「なになに、なんの話し?俺だけなんもわかんねー」
「俺が樹に抱かれた話しだよ」
はあ!?と豊が素っ頓狂な声を上げた。
「マジで!?樹が俊也を!?」
「うわ、俊也から聞けると思わなかった!」
豊も涼太も興味津々と言った様子、だが。
「豊も涼太に抱かれたらわかる話しだろ」
俊也はそう笑いながら言い、
「あー、頑張ってみる?俺」
涼太が話しに乗っかると豊は俄然、首を横に振った。
「いやいや、涼太にとか考えらんねーし。すげーな、俊也」
「拒む理由もないし。でも無事に婚約も解消出来たしさ。母さん、樹に会えるの楽しみにしてるよ、かなり」
うわ...そう、なんだ...。
嬉しい...。
「樹としか考えらんないし、子供なんて」
そう俊也が言った途端、めちゃくちゃ照れた。
「すげ。もう子供とか考えてんの?」
「想像したこともないや、豊の子供とか。さすが俊也」
「なにが」
俊也はまた苦笑い。
隣の俺は多分、顔が真っ赤だ。
「可愛いんだろうな、樹の子供。樹のお母さんも妹さんも樹によく似てたし。涼太じゃないけど。樹の家庭を見てたら、ホント、樹と温かい家庭が築けそう」
俺だけではなく、涼太も豊も何故か照れてる。
「俊也、かなりストレートだよね、こっちが恥ずかしくなる」
「そこがいいんじゃ?わかりやすいしさ」
涼太と豊はそう言い、俺も隣の柔らかい俊也の笑顔を見上げて。
「せっかくの夏祭りだし、色々食べよ。初めての二人の夏祭りの記念にさ」
「...うん」
俺は小さく頷き、手を繋いで立ち上がる。
「じゃ、俺たちも行くか」
「うん。りんご飴がまだあるけど、わたあめ食べたい、あ、たこ焼きと焼きもろこしと焼きそばもいいな。あ、いか焼きも食べたい」
「お前、どんだけ食うんだよ、涼太」
豊がツッコミ、涼太を除く全員で大爆笑した。
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