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夏祭り
豊だけが私服、俺は紺色の浴衣、俊也と涼太はそれぞれ色味が違うグレーの浴衣で近くの神社まで歩く。
境内には色んな出店がひしめき合っていて、みんな目を輝かせた。
「なに食べる?樹」
「どうしよ、めっちゃ悩む...」
繋がれた右手。人だかりもあり、はぐれないように。
「じゃ、りんご飴。あ、かき氷もいいな」
二つはさすがに持てないし、とりあえずはりんご飴。
俊也はメロン味のかき氷。
涼太はいちご味のかき氷、豊は箸に巻かれたお好み焼き。
二人もさりげなく手を繋いでいて、イチャイチャしない、て涼太は言っていただけになんだか微笑ましく感じた。
「美味しい?りんご飴」
「うん。一口食べる?」
交換し、俊也のかき氷を貰い、俊也も俺の食べかけのりんご飴を食べた。
一度、
「悪い、涼太、借りていい?」
豊にそう言い、俊也は涼太を連れていき、俺は久しぶりに豊と二人きりになった。
「なんだろうね、俊也」
ポールに寄りかかり、互いにりんご飴、お好み焼きを手にし、二人を待った。
「んー、多分、涼太の父親の件だと思う」
「涼太の...?」
そういえば、俊也が実家に来てしばらくして、俊也は豊に話しがある、て二人きりで一旦、部屋を出たっけ...。
「うん。もしかしたら...いや、確実に、かな。涼太の父親、逮捕されるかも」
「逮捕...涼太の件で...?」
「いや、違う。別件で。最低最悪な男だったよ、涼太の父親。父親、つっても血は繋がってはなかったけど」
愕然とした。
「血が...繋がって、ない...?」
小1から俺は涼太を知っているのに...何も知らなかった。
「涼太、かき氷、食べ終わったかな、ちょっと出店行かない?」
「うん」
豊と二人、出店に向かう。
豊はりんご飴を1つ購入し、二人の元へ。
俊也と並んで座り、蒼白とした顔を俯かせ、たまに頷いている涼太がいた。
「...どちらにせよ、いつかは涼太の父親は捕まってたよ。内部告発なり愛人に訴えられてさ」
俊也の話し声がした。
豊の言う通り、涼太に父親が逮捕される旨を話しているようだった。
「涼太」
豊が涼太の前に立ち塞がり、涼太が顔を上げた。
涼太は...泣いていた。
そんな涼太を見つめ、豊は真剣な眼差しでりんご飴を差し出した。
「....涼太。大人になったらさ、俺と結婚してくれる....?涼太とならきっと温かくて優しい家庭が作れそうだから」
豊のセリフにびっくりした。
小1の時に涼太が俺にプロポーズしてくれた時のセリフだったから...。
涙が浮かぶ目をまん丸にして涼太が豊を見上げてる。
釣られて俺も涙が出た...。
俺は涼太を幸せに出来なかった...
涼太の当時の想いに答えることが出来なかった。
申し訳なさでいっぱいになる...。
「....なにそれ、あの頃の俺みたい」
「嫌か?嫌ならりんご飴はやらない」
涼太が頬を膨らませた。
「...やだ。食べたいもん、りんご飴」
「彰人と遊んでるお前の姿を見て、お前じゃなきゃ無理だって、そう思った。本気で」
途端、豊を見つめる涼太の顔が真っ赤になった。
隣に座る俊也も優しい眼差しで涼太を眺めてる。
「二人の前で。は、恥ずかしい...ま、まだ16だけど、俺」
「小1でプロポーズしといて、なに言ってんの」
豊がおちょくって、うるさいなー、と涼太は照れて怒りながらも、りんご飴を受け取った。
俺は俊也の隣に移動し、一緒に仲睦まじい二人を見守った。
...俺もいつかプロポーズしてくれたらいいな。
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