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夏休み

涼太の引越しの手伝いもして。 残りの夏休み、二泊三日でみんなで豊の別荘にも行った。 バーベキューや手持ち花火、プールまであり驚いたけれど、豊の小6の弟の彰人くんは大はしゃぎで、隣にはすっかり彰人くんが懐いた涼太の笑顔があり、微笑ましかった。 そして俺はというと、俊也の実家に遊びにも行った。 お父さんは不在だったけれど、俊也に良く似た色白で若く、聡明で綺麗なお母さんが出迎えてくれ。 俊也のお兄さんは友達と出かけているらしく不在ながら、弟の広樹くんとは顔を合わせた。 広樹くんはどうやら人見知りらしい。 「樹くんは苦手な食べ物とかある?」 お昼時、俊也のお母さんは俺を気遣い、そう微笑んだ。 「寿司でもとったら母さん。無難でしょ」 少々ぶっきらぼうながら広樹くんが示唆すると、 「それもそうね。樹くんはお寿司は大丈夫?」 「あ、いえ、その、お構いなく」 それでなくても、3階建てのスタイリッシュなお家で、室内はまた洗練とされていて、豪華で広く。 緊張がなかなか収まらない。 結局、お寿司をとってくれ、俊也のお父さん、お兄さんを省くみんなでご馳走になった。 相変わらず、俊也はさりげなく、微笑を浮かべ、いくらやうにを俺の皿に、そっと移してくれた。 そんな俺たちを俊也のお母さんは穏やかな眼差しで見守ってくれていて...。 俺のことを歓迎する、とお母さんは言ってくれた。 お父さんに関しては...現在、別居中とのことだった。 「樹。俺の部屋、行こう」 俊也に連れられ、俊也の自室。 グランドピアノがあり、とても広かった。 「...中学時代、この部屋に俊也は殆どの時間を過ごしてたんだね」 俊也は口元に弧を描きグランドピアノをなぞりながら、小さく頷いた。 「...初めてだな。この部屋に家族以外が入ったの。初めてが樹で嬉しい、本当に」 不意に俊也の真っ直ぐな瞳とぶつかった。 優しく穏やかで綺麗な瞳...。 大好きな俊也の眼差し。 「...抱き締めたくなった」 俊也が微かに笑う。 「俺も同じ」 どちらからともなく、抱き合った。 「涼太も...まだ不安はあるけど、だけど、良かった...」 「うん...。豊が守ってくれるよ、必ず。もちろん、俺も」 「待って。俺も。俺だって、役に立ちたい」 思わず、俊也の胸の中から顔を上げ、必死に訴えた。 「...わかってる。樹だって男だもんな」 その笑みを含んだ俊也の言葉で、不意に俊也を抱いたあの夜を思い出し、照れくさくなったけれど...。 俊也の長くて綺麗な指先が優しく俺の髪を撫でてくれた。

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