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第5話

 あまりにも惨めでありながら、あまりにも陶酔に浸れる人権を放棄した言葉。  自分が発した情けない言葉を吐いた充希(みつき)は、臍の裏側に重たい熱溜まりを感じていた。 「……そうだね、みっちゃんは卑しくて低俗で蔑まれて当然なマゾ豚だ。本当は最底辺のゴミ溜めを人に唾棄されながら這いずりまわることが相応しいのに、図々しく人間と同じ立ち位置にいると勘違いしている恥知らずの豚。ちゃんと自分を自覚しろよ?」  床へ張り付いて頭を下げた充希の耳に、粘った毒を流し込むように蔵之介が言葉を発し、足の親指で充希の鼻をさらに拉げさせる。  充希が鳥肌が立てているのは怒りのせいではなく、蔵之介に自分の本質を暴かれる悦びからだ。  蔵之介の低い声は脳を握り潰して圧縮し、人としての理性や矜持を追い出していく。 「……わ、わた、しは……豚、です……ッ! 人間、さまの……お情けで……呼吸を、ゆるされる……マゾぶた、です……っっ」 「うんうん、そうだね、マゾ豚だね。チンポのために人間やめた家畜にもなれない廃棄マゾ豚だ――――ほら、豚には豚の格好があるだろ?」  充希の鼻を足の親指で潰しながら、蔵之介が上半身を折り曲げる。期待と脳で感じる快楽にヒクヒクと跳ねる充希の尻を軽く引っ掻いてやれば、廊下の水溜りは更に大きくなっていた。 「かわいそうに……人間様のマネをして辛かったよなぁ? 申し訳なくも人間様に命令して自己嫌悪で押しつぶされそうだったろ? ――――ほら、自分の正しい姿に戻ろうか?」  排泄器官ではなく性器とかした縦割れの穴へ、ずぶんと三角錐の形をしたアナルプラグがめり込んだ。 「んッ、うぁッ……ひぃぃぃんッッ」  自分の中に入り込むつるりとした感触と質量。それが振動を始めたことで充希の口から獣じみた唸りとよだれが止めどなく溢れ出した。 「豚は豚らしく、尻尾がないとね?」  充希の形の良い尻から生える、螺旋状の尻尾はまさに豚そのものだ。 「ほら、轡を着けるから顔を上げることを許してやるよ。アクメ前の豚顔を晒してごらん?」  性器となった腸壁を揺する振動に耐えながら、充希は大きく口を開いて顔を上げた。その顔に理性のかけらを探すことすら難しい。 「尻尾つけるとすぐにトロ顔になるね、マゾ豚みっちゃんは。マゾの上にドスケベとか最低じゃん」  涙とよだれで汚れた顔はすでに熱を孕み、大きく開けた口の中で踊る舌は誘うようにぬらぬらと蠢いている。  蔵之介は勿体ぶるように赤いボールギャグを充希の目の前で揺らし、頬や鼻先をボールギャグで撫でてから大きめの赤いボールを大きく開いていた充希の口に押し嵌める。  ボールの大きさで充希の頬が伸びて窪みを作った。せっかくの端正な顔が台無しだ。 「ん、……ぶ……ッ、うぅん……ッ」  無様な姿を想像して充希が興奮する。ボールギャグの穴から溢れる唾液がさらに不格好だ。  背中に圧と重みを感じて充希が呻くが、滴る先走りが感じているのは苦痛だけではないと教えていた。 「無様でかわいいよ。人間辞めれてよかったね?」  ボールギャグの留め具には長い革紐が取り付けられていて、それを手綱がわりにそや蔵之介が充希の背に跨いで革紐を振る。充希の頬に革紐が当たり、言われる前に蔵之介を背に載せた四つん這いの充希が廊下を歩きだした。 「やっぱり豚は四足だよね……よく似合うよ、みっちゃん。ちゃんと部屋まで歩けたら、ご褒美にチンポをあげようね」  充希より体格のいい蔵之介は重かった。だが人参に釣られる馬と同じく、ご褒美に釣られた充希は尻の中を蹂躙するアナルプラグに耐えながら、一歩、また一歩と進み、二つある寝室の片方へ歩みを止めることはなかった。  二つある寝室の一つはごく普通の作りで、キスやオーラルセックスくらいならこちらを使う。  もう一つの寝室の方が広いのは、寝室と言うよりプレイルームを兼ねているからだ。充希が向かっているのは、もちろんプレイルームの方だった。  背骨が軋むほどの重量を科しながら、のほほんとした声で蔵之介が言う。 「そういえばさ、みっちゃんから貰った小遣い、また無駄遣いしちゃったんだよね。みっちゃんが欲しがっていた椅子型のハンモック、あれじゃなくてつい違うの買っちゃった――――ケツ掘りブランコだけど、いいよね?」

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