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第1話

 その青年は赤いフードのついたマントを着ていた。  赤いフードとマントは、魔狼を撃退し浄化するのに十分な力がある魔術師に与えられる「赤頭巾」の称号を示すものだった。だがその森の魔狼は老獪な知略に長けており、青年は森の奥の老婆の家で、老婆に化けた魔狼に喰われてしまった。  腹に青年を飲みこんだ魔狼は満足の遠吠えをはなったが、これがその森で魔狼の気配を追う猟師の注意を引いた。  猟師は老婆の家に踏み込み、腹の重みで動きが鈍くなり、うとうとしていた魔狼に鉛の銃弾を放った。しかし魔狼の生命力ははなはだしく、弾を受けても眠りつづけている。  猟師は魔狼の腹を切り裂いて魔術師の青年を救い出すと、代わりに鉄鉱石と水晶、岩塩を詰めこんだ。この組み合わせが魔狼にとって毒となることを知っていたからだ。  こうして赤頭巾の青年の命は救われた。彼の名はクラウス・クリムゾン、猟師はライナー・グレイといった。

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