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第8話
王国には今も魔狼があらわれる。
魔狼の撃退と浄化は赤頭巾の称号をもつ魔術師と猟師が協力して行われる。猟師は魔狼を殺し、赤頭巾は浄化する。猟師はあちこちの村にいるが、赤頭巾は王都からやってくるので、到着まで時間がかかることがある。
魔狼の噂がいつまでも消えず、あなたの村に近づいているとわかったら、どうしたらいい?
そんなときは旅の途中の二人組をさがすといい。共に旅をする赤頭巾と猟師を。そして彼らに、魔狼が来たといえばいいのだ。
村人に懇願されると彼らはすぐに出かけていき、しばらくして戻ってくる。ひとりがあなたに涙石を渡すだろう。涙石は魔狼が倒されたあかしだ。とても高価なものだと、まだ子供のあなたも知っているくらいだ。
でもこの二人組は「我々には必要ない」という。
どうしてなのだろう。あなたは不思議に思うが、母親にいいつけられてお茶と食物を運び、賓客となった二人組の様子を眺めるうちに、その意味がわかってくる。この赤頭巾と猟師にはお互いがいるだけでいいのだ。子供のあなたにも透けてみえるほど、強い絆が二人をつないでいる。
食べ終わると二人は立ち上がり、あなたに礼をいう。あなたは村を出ていく二人組をみつめながら、手の中の涙石を握りしめる。
あなたはこの日のことをずっと忘れないだろう。
こうして赤頭巾と猟師の物語は、あなたが大人になっても語り伝えられていく。
(おしまい)
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