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第23話

 2ー11 僕たちはまだ  僕は、ソーを抱いたまま集落の中を歩いた。  どこにももう、生き物の気配もない。  僕は、廃墟の中にあった井戸の近くの石に腰をおろした。  ソーは、僕の膝の上でくつろいでいる。  気楽なもんだ。  僕は、ため息をついた。  「どうした?主殿」  ソーが片目を開けて僕のことをちらりと見上げる。  僕は、再び吐息を漏らした。  「ルドが僕を望んだのは、持参金が目当てだったけど、僕には持参金なんてないから。だから、ルドはこのままだと借金奴隷になるしかなくって」  「なるほどな」  ソーは、目を閉じてグルグルと喉を鳴らした。  「それで主殿は、気を揉んでいるというわけか?」  「別に気を揉んでなんて。ただ、このままだと僕も巻き添えで借金奴隷にされちゃうかもしれないから」  僕は、もごもごと答えた。  「この上、奴隷になるなんて嫌だからさ」  「そうか」  ソーは、頷いた。  「しかも、領民が0人か。これでは先が思いやられるな」  僕が3回目のため息をついたとき、背後から声が聞こえた。  「ルーシェ?」  ルドだ。  僕は、背後を振り向いた。  そこには、息を切らせているルドの姿があった。  「よかった、無事で」  はい?  僕は、キョトンとしていた。  何?  僕、なんか危なかったの?  というか、今は、会いたくなかったし。  僕は、ぷいっとそっぽを向いた。  「何か用ですか?ワイエス男爵」  「ルーシェ」  ルドは、僕を背後からぎゅっと抱き締める。  「君がどこかに行ってしまったのかと思った」  どきん、と僕の心臓が跳ねあがる。  なんで、こんなときにときめいちゃうの?  僕は、ルドの腕を振りきろうと思ったけどできなかった。  もう僕は、この手を失いたくない。  この温かい腕を。  「これからどうするの?ルド」  僕は、ルドに抱き締められたままきいた。  ルドは、答えた。  「君とは離れられない。なんとか勇者時代の知り合いたちに頼んでみるさ」  「ルドは」  僕は囁いた。  「今からでもアナハイム辺境伯のお嬢様を、僕の姉上たちの誰かを奥さんにするべきだよ」  「なんで?」  ルドが僕を抱く手に力を込める。  「君がいるのに?」  「僕は側室でも、愛人でもいいから」  僕は、ぎゅっとルドの腕握り締める。  「そうすれば」  「私は、そんなのは耐えられない」  ルドが僕抱き上げると膝の上に座らせた。  「それにもう、私たちは伴侶だ」  「まだ、僕たちは、伴侶じゃない」  僕は、ルドに抱かれたまま告げた。  「僕は、まだルドに抱かれてないし」  

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