22 / 63
第22話
2ー10 廃墟
僕は、ショックを受けていた。
そんな下心があったなんて。
母様が僕のことをちらっと見ると、厳しい調子でルドにきいた。
「では、あなたがルーシェと婚姻を結んだのはルーシェの持参金が目的だった、と?」
「いえ、違います」
ルドが慌てて答える。
「勘違いしないでほしい。確かに私は、アナハイム辺境伯のところに持参金目的で近づいたけれど、そこでルーシェに出会ってしまった」
ルドは、僕のことをじっと見つめる。
「出会ってすぐに彼が私の番だとわかった。だから、もう、ルーシェとしか結婚は考えられない。だから、私は、ルーシェを欲しいとアナハイム辺境伯にお願いしたんだ」
「でも」
僕は、うつむいて低い声で呟く。
「僕には持参金なんかないし。それじゃ、ワイエス男爵は、都合が悪いんじゃないの?」
「ルーシェ?」
僕は、立ち上がるとルドに向かってにっこりと微笑んだ。
「僕、もうお腹いっぱいで。お先に失礼します」
「ルーシェ!」
ルドが呼びとめたけど僕は構わず食堂から出ていく。
そのまま僕は、早足で屋敷の外へと出た。
といっても屋敷の外に何があるわけっでもないけどな。
僕は、まっすぐ歩いていく。
「まったく!」
歩きながら僕は、ブツブツと文句をこぼした。
「持参金がつかなくって悪かったな!」
僕は、これでも男だ。
例え、結婚のために家を出ることがあっても男には持参金はつかない。
ルドは、それでも僕を選んでくれた。
でも、それじゃ、ルドは。
僕は、生まれて初めて女の子じゃなかったことを残念に思っていた。
もし、女の子なら。
ルドの問題も解決していたかもしれないのに。
しばらく歩いていくと崩壊した家々が見えてきた。
どうやらこの辺りは、以前は集落があったようだ。
なんでこの村は廃墟になったんだ?
僕が考えていると足元から声が聞こえた。
「どうやら魔物の襲撃を受けたようだな」
黒猫のソーが僕の足元にじゃれついてきた。
「ソー」
僕は、しゃがみこむとソーを抱き上げる。
「ここを魔物が襲ったのか?」
「おそらくな」
ソーは、僕の腕のなかで丸くなる。
しっぽがぺしぺしっとリズムをとるように僕の腕をたたく。
「それで、ここの人々は死に絶えたか、出ていったのだろう」
ともだちにシェアしよう!