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第21話

 2ー9 慰謝料ですか?  ええっ?  僕は、ランクルの言葉に耳をそばだてた。  領民0なんですか?  「それに、奴のこともあるし」  奴?  僕は、ルドの方を見た。  ルドは、もぐもぐと肉を食んでいたがやがてごくりと飲み込むと答えた。  「どうするもこうするも、ないものはないとしかいいようがないな」  ルドの言葉に僕は、首を傾げていた。  ないものはない?  「あの、ワイエス男爵様?」  母様がルドに訊ねた。  「何か、お困りのことでも?」  「ああ、お気遣いなく」  ルドが爽やかな笑顔で答える。  「ちょっとうるさいハエがいましてね」  「ちょっとどころじゃねぇし」  ランクルがふん、と鼻を鳴らした。  「来月までに5万デルタの金がないと俺たちは、というかお前は奴隷落ちだろうが」  はい?  僕と母様は顔を見合わせていた。  どういうこと?  「ランクル!」  ルドがランクルを睨み付けた。  「余計なことを言うな!」  いやいやいや。  余計なことなんかじゃないよね?  僕は、ルドに訊ねた。  「どういうことか、僕にもわかるように話して、ルド」  「ルーシェ」  ルドは、困ったような顔をして僕のことを見た。  「これは、君たちには関係ない話だから」  「もう、僕たちは他人じゃないし」  僕は、ルドに食い下がった。  「ルドの問題は、僕の問題だし」  「ルーシェ」  ルドは、深いため息をつくと話し始めた。  「実は」  ルドの話によるとそれは、ややこしい話のようだった。  勇者として魔王を倒して王都に凱旋した勇者一行は、みなにもてはやされていた。  その中でも宰相のマリオストルは、どうにかして勇者を自分の配下に置こうとしていた。  マリオストルには、娘が1人いた。  名は、リリアンナ。  花のように美しくて、毒のある美女だった。  彼女と婚約をすることになった勇者ルドはだったが、彼女を知るほどに彼女との婚約が嫌になっていった。  それが決定的になった出来事が起きる。  それは、リリアンナがある獣人の奴隷を酷く虐げていることをルドが知ったことだった。  ルドは、婚約を破棄した。  そのことを根に持った宰相マリオストルは、ルドに高額な慰謝料を請求した。  その額5万デルタ。  1デルタは、僕の記憶では、日本円にすれば1万円えんぐらいの価値があるはずだ。  だが、普通なら魔王を倒した報償金で払えなくもない額らしい。  しかし、マリオストルの陰謀により、報償金は領地という形で与えられることとなった。  それが、ここ、現ワイエス男爵領だった。  「こんな領民もいない荒れ地じゃ売り払ってもそんな金にはならない。だが、来月までに慰謝料を払わなくてはルドは借金奴隷になるしかない」  ランクルが僕たちに話した。  「だから、俺たちは、ルドにアナハイム辺境伯の娘との縁談をすすめたわけだ」  要するに、アナハイム辺境伯の娘と結婚してその持参金を慰謝料に回す予定だったのだという。  マジですか?  

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