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第35話
3ー11 虎になっちゃたの?
僕は、なんとかして虎の中から脱出しようとしてみたけど、虎は、僕が自分の側から離れることを許さなかった。
「ルド!」
僕は、ルドの名を呼んだ。
「ルド!どこ?」
ぐるるるる、と虎が喉を鳴らして僕のことを太くて長い尻尾でぺしぺしと叩く。
はい?
僕は、ちらっと横目で虎を見つめた。
まさか、ね?
「ルド?」
僕の言葉に虎が返事をするかのように低く唸ると僕のことをその分厚い舌でペロリと舐める。
やっぱりもしかして、この虎って?
「ルド?」
僕が恐る恐るその名を呼ぶと虎がグルルと喉を鳴らす。
「やっぱり、ルドなんだ?」
なんで?
僕は、小首を傾げる。
どうしてルドが虎になってるの?
そして、ここは、どこなの?
僕は、虎の馴染みのある緑の瞳を見つめて訊ねた。
「ルド、人の姿に戻れないの?」
虎は、ガオッ、と声をあげた。
どういうことですか?
僕が困り果てていると小屋の扉が開いてランクルが入ってきた。
ルドが低く唸って威嚇している。
ランクルが苦笑いした。
「そんなに怒るな。飯を持ってきてやっただけだろうが」
ランクルは、ドアを入ったところにそっと食事ののったトレーを置くと僕にニヤッと笑いかけた。
「大変だろうけど、頑張れよ、ルーシェ」
はい?
僕は、ランクルにきいた。
「なんでルドが虎になっちゃたの?もう人に戻れないの?」
「そりゃ、もどれるだろうさ。こいつがその気になれば、な」
ランクルが僕に説明してくれた。
「こいつは、今、発情期に入ってるんだよ」
なんですと?
僕は、ランクルを2度見してしまった。
発情期ですと?
ランクルが告げる。
「こいつの種族は、発情期に入ったらこうして巣を作って伴侶を閉じ込めるんだよ。ちなみに伴侶が妊娠するまで巣から出さないらしい」
はい?
僕は信じられない思いでルドのことを見た。
マジですか?
「お前ら、やったんだろ?」
「何を?」
僕は、とぼける。
ランクルは、にちゃあっと笑った。
「とぼけるなよ、ルーシェ。やることやらなきゃ、こいつがこんな姿になることなんてないし」
ええっ?
僕は、ちらっとルドのこと見た。
もしかして僕のことを抱いたからルドは虎になっちゃたわけですか?
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