8 / 8
番外編︰ss 「初めてのキス」
中学2年の夏。
部活帰りにオレは幼馴染の直斗と男同士のえっちを初めて見た。
キスしたことある?という問いかけに、ないと答えた直斗。
「航平は?」
この質問にオレは一瞬だけ返事するのを躊躇した。
「・・・・・・一回だけある。」
◇◇◇◇◇◇
オレと幼馴染の直斗が出会ったのは保育園の頃だった。
小柄で女の子みたいに可愛らしかった直斗はよく女の子とおままごとをしていた。
オレは男の子たちと園庭で遊ぶことの方が多かった。
年長になったある日、いつものように園庭で遊ぼうとしたら、おままごとをしていたはずの直斗が「ぼくもいっしょにそとであそんでもいい?」って聞いてきたから「いいよ」と答えると満面の笑みでついてきた。
幼心に「かわいい」とか思った記憶がある。
その日からオレとナオは一気に仲良くなって、保育園が終わったあともお迎えの時間が被る日は家の近くの公園で遊んだりしていた。
小学生になってからはクラスが離れたり一緒になったりしながらもオレたちは二人でいたり、数人の男友達といたりした。
小学6年生の夏休み。
オレの両親もナオの両親も共働きで昼間はどちらかの家にいることが多くなった。
「おっしゃー!航平に勝ったぁぁぁぁ!!」
ゲームのコントロール握りしめガッツポーズしながら、喜ぶナオが可愛いと思った。
最近二人でハマってるゲームだけど、ナオがあまりにも弱いのかすぐに負けるから、いい加減可哀想な気もして今日は手加減したんだけど、それは内緒だ。
喉が乾いたから二人でキッチンへ行く。
「あれ?航平、背伸びた?」
「ん?どうだろ・・・・・・?」
「えっー、ちょっと前まではオレのがほんの少しだけ高かったのに!!」
そう言うナオの横にピタリと立つと、たしかにオレの方が少しだけ高かった。
「航平の親って二人とも背高いから、航平もきっとデカくなるんだろうなあ。」
「ナオのお父さんも背高いでしょ。」
「オレは母さん似だし。兄ちゃんは父さん似だけど。」
だから、オレはそんなにデカくならないかもと口を尖らせて言う。
その仕草が何だか可愛くて思わず笑ってしまった。
「何だよー!」
「いや、ナオって可愛いなあって思って。」
「・・・・・・は?可愛いなんて嬉しくねえし。」
そう言ってそっぽを向くのも可愛い。
部屋に戻って宿題を少しやってたら、ナオが眠いのかユラユラ揺れている。
「ナオ、眠いの?」
「んー、んぅー、ねむい。」
半分寝ぼけているナオを後で起こすからベッドで寝てていいよというと素直にベッドで眠りにつく。
暑い、暑い真夏ーーー・・・・・・。
扇風機の風が唯一の救い。
ーーー・・・・・・可愛いなんて嬉しくない
さっきのナオの言葉が思い浮かぶ。
男だし、オレだって言われたらきっと嬉しいなんて思わない。
でもナオは、オレから見たら本当に可愛いんだ。
ベッドで眠るナオをじっと見つめる。
この髪って生まれつきとかって言ってたっけ。
サラ、っと茶色がかった髪を撫でてみる。
柔らかくてサラサラ。触り心地いいかも。
前髪を分けておでこ、頬を無意識で触っていた。
やわらけえ。
ナオって日焼けしにくいから、真夏でも色白いんだよなあ。オレはすぐに真っ黒になるけど。
ここも、柔らかいのかなあ。
唇にそっと触れるーーー・・・・・・。
「んー、」
ヤバイ!!起きた!!??
慌てて手を引っ込めたけれど起きる気配なくてホッとする。
てか、何やってんだオレ!?
ナオに触りまくってたのが何だか罪悪感のように感じる。
けどーーー・・・・・・。
もっと。
眠っているナオの顔近くに両手をついて上からナオを見下ろす。
触りたいなあ。
そっーと自分の顔を近づける。
心臓がドキドキし過ぎてて少し息苦しい。
柔らかそうな唇に触れたくて、眠っているナオに生まれて初めてのキスをしたーーー・・・・・・。
やっぱり柔らかい。
キスってこんな気持ち良い感じがするのか。
2年後、オレたちがそれ以上のことをするなんてこの時はまだ知らなかった。
ともだちにシェアしよう!