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第7話「―はいいけど、キスはなぁ…」7

「―はいいけど、キスはなぁ…」7  鴉岬(あんざき)は玄関ホールで待ってたみたいだった。インターホン押したらまだ鳴り響いてる途中なのに出てたもん。 「鴉岬」  安心して抱きつきそうになっちゃった。あの人に会うといつも抱きついてるから癖だね。 「島莱(とうらい)……いらっしゃい」 「お邪魔しまぁす」  鴉岬は髪ぐしゃぐしゃで、首にいっぱい虫刺されみたいなのできてた。電話で聞くより声ガラガラで、それはそれで面白かった。 「茶」 「……すまないな」  オレはビニール袋を鴉岬に出した。鴉岬がそれを受け取って、なんか夫婦みたいぢゃね? 「飴ちゃんも」  美味そうだからオレ用に買っておいたけど、思ったより喉ヤバげだから包みを剥いた。袋じゃなくてスティックタイプ。眠気覚ましにスースーするやつだからたまに舐めてたけど、メロン味は初めて見た。 「ありがとう……」 「舐めとけ」  断れないようにフィルムも剥いちゃった。 「でも、」 「アレルギーあるん?」 「ないが」 「ん、」  フィルム巻いたまま突き出したから汚くないだろ。そしたら鴉岬は口を開いて首出してきたから飴放り込んだ。歯に当たってからんってした。  何しに来たんだっけ、オレ。  鴉岬は思ったより平気そうだった。だから長居する必要もないかな。 「んじゃ元気でな。焼き鳥屋楽しみにしてるから」 「もう帰るのか」 「落ち着いたかな~って」  こんな時間に急に来られたらフツーは追い返したい。挑んできたのはそっちだけど、多分鴉岬は不本意で。でも真面目だからオレが帰るって言ってんだしそのままバイなら~ってすればいいのに引き留めちゃうんだな。やっぱり律儀だから。育ちがいいんだね。オレはそのまま帰って欲しいから、バイバ~イってやっちゃうのに。 「もう少し、居ればいい……その、時間が許すなら……」  まぁじ?あと風呂入って寝るだけだし、明日何の予定もない。 「いいんか?」 「泊まっていっても構わない」 「いや、さすがにそれは悪い」  でも結局、帰るの面倒臭くなってオレは鴉岬の家に泊まることになっちゃったから最早これはフラグだったね。  オレは鴉岬の家のシャワー浴びたら、鴉岬はもう寝ちゃってた。いい家に住んでるからトイレ風呂別で2部屋ある。リビングと寝室。寝室はさすがに行ったことないけど、ハメ撮りにはベッドあった。  鴉岬はリビングのテーブルで腕を枕にして寝てた。オレどうしよ。やっぱ着てきた服着て帰ろっかな?  もう少し身体乾かしてから服着ようと思ったけど、さっさと帰ろ。鴉岬には帰るってWINEしとけばいいや!  でもオレが動いたときに、鴉岬は目が覚めちゃったみたいだった。 「ああ、すまない……着替えがあるから、それを着るか」  鴉岬のかな~と思ったけど、テロンテロンの柄っ柄のいかちぃのは絶対に鴉岬のパジャぁマじゃなかった。てろんてろんに光ってる真っ赤な布に白い菊のプリントだもん。正気か。 「これ、誰の」  咄嗟に訊いちゃったよ。野暮な質問だなんて思う間もなかった。やらかしたわ。 「……前の恋人の」 「そか」 「あまり使ってないが嫌か?俺ので良ければ貸す」  オレは首振った。 「だいじょぶ。借りる。鴉岬のだったらギャップすごいなって思って」  それでオレはそのテロンテロンのパジャぁマを着た。サングラス掛けて金色ネックレスしたら、ほわんほわんキューティー美少年のオレもとうとうヤカラ系デビューじゃん。  鴉岬から「ガラ悪いな」キリッくらいのこと言って欲しかったんだけど、鴉岬はちょっとショボくれてる感じがした。急に萎びた。ナメクジに塩かけるとそうなる。オレのほうを見て笑ってるのがなんか空っぽ。疲れてる。そらそうか。 「似合ってる?」  だからちょっとオレは気を遣ってふざけてみる。そんなカオすんなよって。 「サイズは合っているみたいだな」  サイズの話か。似合ってるかどうか、聞いたんだけど、話題逸らされるのは似合ってないときだ。普通なら。嘘でも似合ってるって言っておけばいいのに。お察しくださいってことか? 「似合ってるって言えし」 「似合ってる、が、」  "が"って何?なんで逆接? 「なんだよ」  鴉岬のやつは、顔がボッて赤くなった。なんで! 「似合ってる。よかったら持っていくか?」 「要らないケド……てろてろすぎて。動くたんびにすーすーいうし」  そうなんだよ、擦れるたびにすぃ~すぃ~って鳴る。子供が歩くたびにピコピコいうサンダルみたいじゃん。 「鴉岬が買ったん?」 「いいや……」 「ああ……カレシか」  おっと、これは言うべきじゃなかった。でも口にしちゃった。もう遅い。 「―の、女」 「え?」 「鳳翅(あげは)の女」  なんて?どゆこと?アゲハノオンナって何?キャバクラ? 「新しい女から貰ったそうだ」  オレ多分、ぼけ~っとしてた。 「嫌……だよな。すまない。脱いでくれ」 「いや、嫌じゃねぇけど。鴉岬がいいなら」  で、なんか気拙い空気になった。変な沈黙。 「鴉岬ぃ」  触ろうとしたら避けられて、ちょっとショック。ちょっとだけ。これくらい。小指の爪の白いところ。 「俺も風呂に入ってくるから……寛いでいてくれ」 「う、うん……」  鴉岬はそれで、風呂に行っちゃった。寛ぐって何していいか分かんなくて、しゃれおつな壁掛け時計のコチコチいうのを聞いてた。オレん()、壁に時計なんかないぞ。  透明のアクリル板みたいな時計盤に、白地で数字が振ってあって、水色みたいな緑みたいな灰色みたいなゴムで時計盤の周りが囲ってある。それで、紐と振り子が揺れてる。オレも揺れた。  鴉岬はガチ入浴なのかちょっと遅かった。でもあれか、オレもあの人とめっちゃイチャイチャした後は時間かかるもんな。一人でできんのかな?できるよな。だってオレが行ってどうすんの?オレには関係ナ~イ。  …………オレには関係ない、よな?  でもあの人は、オレが中で出しちゃったの掻き出すのに、一人じゃできてなかった。  ちょっとだけ様子みてみよって気になる。 「あんざき」  オレは脱衣所から声をかけてみた。磨りガラスに鴉岬がぼやけて見える。返事がなくて、もう一回呼んでみる。 「あんざき……」 「とうらい……?」  返ってきた声がちょっと震えて聞こえた。 「あんざき」  オレがあの人のおっぱい吸いたいときの甘えた声が出ちゃった。  磨りガラスの奥は静かになっちゃって、なんか直感みたいなのがあったから開けちゃった。 「とうらい……」  鴉岬はシャワー浴びながら風呂場の隅っちょで丸まって泣いてた。オレはどうしていいか分からなかった。オレを見たとき、眼鏡のない目がカッて開いた。ぼろぼろって涙が一気に落ちた気がした。  眼鏡無くて髪下ろしてる姿がなんか若くて、抱き締めてやるか~、怖かったもんな~って風呂場入ろうとしたけど、オレは今、てろんてろんのパジャマ着てるし、借り物だして、せっせとパジャマ脱いだ。実はノーパン。それでぱちゃぱちゃ風呂場入ったら、鴉岬はもう立ってた。 「なんだよ」 「今のを見て涙が引っ込んだぞ」  涙拭きながら鴉岬が言った。ちょっと笑ってる。泣いてたって認めちゃうところがちょっと意外。 「えぇ?ダメだった?」 「すぐに駆け寄ってきてくれ」 「だって濡らしちゃ悪ぃじゃん」  大の男2人でフルチンで何したんだろ。また着なきゃな、めんどくせ、って思ったら、鴉岬が肩に絡んできた。 「ありがとうな。嬉しかった」  涙でまだ赤くて、実は無理してない?オレの奇行(イケメン)(かこつ)けて、はぐらかしただけなんじゃ…… 「う、うん」 「風邪ひくぞ。もう一回温まっていくか?」 「ううん。へーき。鴉岬こそ、ちゃんと温まれよ」  風呂場から出てこようとしたけど、鴉岬の後処理のことが心配なんだった。 「鴉岬、大丈夫か?」 「大丈夫だ。すまないな、心配をかけて」  そういう、よくある、なんとなくの「大丈夫?」じゃ、ないんだよな。 「鴉岬」 「なんだ」 「手伝う。ちゃんとやらないと、ツラくなるって……聞いた」  ふざけない。紳士に!真摯に!シリアスに。尻assって……違う! 「だ、誰に……っていうか、何のことだ……」 「いいから!鴉岬のコト、助けたくて来たんだよ~、オ、オレは!」  抑揚がおかしくなった。 「助……ける…………?」 「し、尻」  ぷいってやるみたいに鴉岬はそっぽ向いちゃった。 「どうして……!」  オレ、怒られた。怒られが発生した。デリカシーなかったかも。オレはしゅんとしちゃった。どしたらよかったんだろ? 「大変かも……って、思って……」 「そんなこと、させられるわけ、ないだろう……」  鴉岬はオレのほう見てくんない。 「オレは別にいいよ。鴉岬は、トモダチ、だろ。でも、オレはいいケド、鴉岬が嫌なら帰る。勝手に押し掛けたのはこっちだし、鴉岬の様子(かお)みれたし……」  オレはヘラヘラ笑った。だって気拙いのは鴉岬のほうじゃん。 「島莱……」 「帰れって、言いづらいもんな。でも、一人でできる?」  鴉岬は止まっちゃった。世界、静止画になったか?でもシャワーはしゃーしゃー白くなってる。オレ動くし。  鴉岬は顔真っ赤にして首振った。 「(ぽんぽん)痛くするって聞いたもん、オレ。掻き出す……からさ、痛かったら言えよ……」  多分オレから行動起こさなきゃいけなくて、オレは鴉岬の傍に寄った。 「島莱……すまない。こんなこと……」 「へーき。今度の焼き鳥屋、何食うかでも考えておけよ」  鴉岬の尻のソコは気触(かぶ)れてるみたいにちょっと腫れてて、乱暴に抱かれてるんだなって思った。そら、乱暴でしょうな。あんな動画撮ってるんだもん。  (オレ)の感覚が紛れるようにシャワー当てながらカヌレ?濡れなんとか?濡れ煎餅みたいになってるところに指入れてみた。 「ん……っぁ」  キュッて鴉岬に締め付けられて、オレもなんかキュンってキちゃった。だってなんか、別個に生きてるみたいなんだもん。 「痛い?」  鴉岬は首振った。シャワーの水の粒々が髪の毛にくっついて白っぽく見える。  力加減は苦手だケド、結構頑張ったと思う。鴉岬のケツの中はねっちょりしてて、マジで容赦なく出されたんだなって思ったら怖くなっちゃった。ヤバいヤツが近くにいるって怖くない? 「こんなことをさせて、すまない……本当に……すまなく、思う……」  オレの指ぎゅって絞めるところから白っぽいケドもう色落ちてしてきた液体が漏れ出てきた。 「いいって。謝んなよ。お酒あんの?ちょろっとやって、忘れようぜ」  でも鴉岬には酒飲まさないほうがいいんだよな~なんて考えてた。シャワー当てながら中身掻き出すあいだ、全然違うコト考えてた。 「ぁ……う、うぅ……」  全然、違うコト考えて違うトコ見てたから、オレは鴉岬が呻くまでまったく、鴉岬のおちぇんちぇが勃ってるコトに気付かなかった。お尻周り舐めてると感じてたりするからね。 「鴉岬」 「あ………ああ、すまない、島莱……」 「なぁにが」 「島莱……もう、平気だ。平気だから……あとは自分で、」  オレが勃っちゃったおてぃんてぃんに気付いたコト、気付いちゃったんだ。 「いいよ、そのままで。しょーがないよ。鴉岬じゃなくたって、ここ触ったらこうなるから気にすんな」  オレは多分鴉岬のイイトコロを押しちゃった。 「あ……ッ、ぅふ、やめ……」 「やめる?」 「そんなこと、しなくて……いい」 「綺麗にするから、出しちゃえよ」  オレは鴉岬の背中におっぱい重ねた。シャワーも鴉岬の背中に掛けて、鴉岬のちんちんゴシゴシすることにした。 「んな……っ、島莱ぃ……」 「とりあえず出すもの出しとこ」  鴉岬のシコった。大きいは大きいケド、ちょっと皮被ってて、趣がある鴉岬のおちん。洗い方が分からない。シャワーヘッドを取って、皮を下げてから先っちょにシャワー当てた。 「あっ!うぅ!」  鴉岬が仰け反って、オレから逃げようとする。 「ちょ、ちょ、鴉岬……!」 「シャワー、だめだ……それ……」  痛かったのかも?と思ってオレはシャワーを遠ざけた。鴉岬はちょっと腰かくかくしてて、痛いなら和らげようと思って扱いた。 「あ、く……ぅ、ぅ、」  鴉岬の身体がぴくっ、てなって手の中の鴉岬のも、とくんとくんしてた。 「あんざき……」 「すまない…………」  弱々しすぎる態度で、オレはぎょっとした。 「ご、ごめんな!あ……えっと、その、」 「あとは自分でやれる。ありがとう、それからすまない」  オレは手を取られて、ボディソープで洗われちゃった。なんか逆に悪いなって思った。 「あんざき」 「先に寝ていてくれ。ソファーで良ければ」 「うん……」  オレはてろてろんのパジャ~マを着直してリビングに戻った。オレ、鴉岬の役に立てたんかな。逆に迷惑かけちゃってないかな。コチコチチックタックいってる壁掛け時計の音聞いてた。シャワーの音も微かに聞こえる。少し前までこの部屋に届くような声でセッコ~スしてたんだ。なんか変な気分だったし、セッココっていうよりレイプだよなって思った。脅されてるのかな。ああいうプレイなのかな。レイプとプレイって言葉似てるの嫌だな、とか色々考えてた。そうしたら鴉岬が風呂場から出てきた。  髪下ろしてて、眼鏡もいつものとは違うプラスチックのやつで、見慣れない鴉岬だった。パジャマ姿なのも。  オレは多分、見惚れてた。 「飲むか」  鴉岬はオレの頬っぺたに冷えた酒の缶むにってした。 「ん、あんがと。鴉岬は」 「俺はいい」 「オレだけ飲むん、悪ぃよ」 「島莱は、色々してくれただろ」  オレ頭悪ぃわ。条件反射でもうプルタブ摘んでた。プシって音がする。ジュースみたいな甘い酒。 「もう飲んでたんじゃないのか」  ひぇ、ってなった。オレは意外と咄嗟に吐いた自分のウソも覚えてられたんだなって思ったし、鴉岬も結構、細かいところ覚えてるんだなって。 「オレは酒豪なの!」  ぐびびび!って飲みっぷりを見せてあげた。  鴉岬はオレの飲みっぷりを見ててはくれたけど、静かに隣に座った。 「ありがとう」 「ほぇ……?」 「ありがとう。色々と。嬉しかった。島莱の優しさが」  なんか急に怖くなっちゃった。鴉岬がどっか行って消えちゃいそう。そんな、桜に攫われちゃう悲劇のヒロインみたいな体格(キャラ)じゃないのに、なんか。 「は?べ、別に、そんなんぢゃねーし!」  照れ臭かった。鴉岬は意外にからから笑ってる。 「埋め合わせしなきゃならないものが、増えていくな……」  それは独り言みたいだった。 「いいよ。そういうもんだろ?人付き合いなんて。気にすんなよ」 「人付き合いか……自分の未熟さが嫌になる」  鴉岬はちょっと悩んでる感じだった。遠くどっか見てる横顔、マジで美人だった。 「人間、あっちもこっちもステ万能(カンスト)ってワケにはいかんよ。さ、さ、寝るぞ。疲れてんだろ」 「そうだな。ソファーでもいいか。すまないな。ベッドは……汚れていて」  急に目を逸らして気拙(きまず)そうにしてた。別に客をソファーに寝かせるのか?とか思ってないよ。押しかけたのはこっちだし、鴉岬は潔癖症だし、それにさっき元カレと例のベッドで結構なコトしてたの知ってるし。いやいや、もしかして誘ってる?でもそんなので誘ってる判定していいもの?ちなみに誘われてたとして、ノれる? 「ンでも、鴉岬はどこで寝るん?」 「俺はタオルを敷くなり、床で寝るなりするさ」 「タオル敷いてベッドで寝ろよ。オレも気が休まんない。鴉岬のコト心配で来たんだしさ」  ってオレは割と思ったコト言ったんだけど、自分の声で聞いてみると恩着せがましかった。心配したのはこっちの都合だし。 「分かった。すまない。気を遣わせたな。ありがとう。おやすみ」  鴉岬はオレがソファーに寝転ぶと電気消してくれた。寝室のほうに入っていって、オレも2回シコったしここまで急いできたし、酒も飲んだから案外疲れてたのかもしれなくて、目蓋はすぐに重くなった。  鴉岬のショッキング動画でずっと鴉岬のコト考えてたせいか、夢もなんかいやらしくて、ちょっとおちむちむがビン……!ビン……!って育っちゃう感じが寝ながらあった。でも抜こうとは思えなくて、もうちょっと寝てたかったけど目は覚めちゃった。スマートヒョンみたら深夜帯。なんか小さくあんあん聞こえたから下の階の人がAVでも観てるのかなって思った。でもなんか、下の階じゃないっぽくて、まさかとは思ったけど寝室のドアにオレの耳が誘導するワケ。悪いとは思っても、泣いてるようにも苦しんでるようにも聞こえたから、近付いちゃった。そしたら話し声も混ざってきたから、本格的に別れ話か?って思った。別れてるらしいケド、ちゃんとは別れられてないみたいだから。 『赦して………ぁひぃんっ、赦して……っ!』  ドアに耳寄せてても、鴉岬の泣いてるような声しか聞こえなかった。電話でぼそぼそ相手は喋ってて、酷いコト言われてるみたいだった。 『む、り………むり、そんな………あっあっあっ、』  相手多分、元カレだと思った。動画と同じような声で、鴉岬がそんなん聞かせるの、元カレだと思う。多分だケド…… 『でき、ない………ムリだ………あっあっああああ、!イぎたい、イがせ、あっぅぅ!』  鴉岬はツラそうなのに、オレのおてんてんは夢のいやらしさもあって、鴉岬から借りてるてろんてろんのぴっかぴかのパジャぁマを押し上げてた。元気すぎない?ヌきまくったのにもう精子作ってあるんだ。タマタマがどくどくしてる。 『イく、あっああああっ、イく、イくっ!』  さすがに人の家でシコるのはできない。オレはめっちゃおちぇむちぇむがイッライラしたけど我慢してまたソファーに戻った。何してんの鴉岬……  寝たフリしてたらやっぱり潔癖症の鴉岬は部屋から出てきた。 「寝られないん?」  白々しく訊いてみたら、鴉岬はすごいびっくりしたのが音で分かって、悪いコトしたなって思った。 「と、島莱こそ……寝られないのか」 「オレはどこでも寝られるケド、ちょっと目が覚めちゃった」 「……すまない。起こしたな」  オレは首振ったけど、暗いから分からなかったと思う。 「カラダ、へーき?」  これは、深い意味はないんだよ。深い意味は。探りを入れてるみたいで嫌になっちゃった。いや、探り入れてることには間違いないんだケドさ。 「ああ。心配かけたな」 「んーん。おやすみ」  って感じでさっさと切り上げて寝ることになるんだろうなって思った。でも違った。ウヴィーンって蚊の羽音ほど不快な音じゃないけど低い振動があって、え?ってなったときには鴉岬は膝を床に打ってた。 「え、ちょ……」  オレはびっくりして具合悪いのかと思った。スーマッヒョを懐中電灯モードにして壁に向ければほわんってリビングの様子が浮き出る。 「すまない、島莱……何でもない。ぁ、んっ………何でもないんだ」  ウヴィーンって音は鴉岬から聞こえてた。でも鴉岬は口元押さえて、立ち上がろうとしなかった。 「あんざき……」 「んッ……、ぁっ、寝ていてくれ……平気だから」 「なんでもないのに、そんなえっちな声出すの」  鴉岬はがくがく揺れてた。四つ這いになってて、大型犬が座ってるみたいな体勢だった。腰に力が入らないみたいだった。 「とうらい……」  潔癖な鴉岬が口開きっぱなしでヨダレが落ちていった。なのに鴉岬だからあんまり汚いとかだらしないとか思わなかった。 「鴉岬、だいじょーぶ?」  大丈夫じゃなさそうだった。大丈夫かっと訊いて、大丈夫ぢゃないって答えるタイプじゃないよな。 「見ない、で………とうらい………」 「でもこのままじゃいらんないだろ。オレに掴まって。起こすから」  鴉岬は首振った。恥ずかしくて泣きそうになってる。 「これ以上、迷惑かけられない」 「迷惑とか感じてないケド。オレは尽くすタイプなの。かわいいポメなの。褒めろ、おら」  オレは鴉岬の腋の下に手を入れて持ち上げた。鴉岬もそうしたら自分で立てるみたいだった。ちょっと汗かいてて、鴉岬の腋の匂いとか気になった。やっぱり臭いんかな。嗅ぎたかったけど可哀想だからやめた。オレが今まで寝てたソファーに乗せる。 「手を洗いたくて……」 「しゃーねーなー」  オレはなんか前のめりちっくな鴉岬を支えて水道まで連れて行った。手が冷えたのがそれなりに効いたのか、鴉岬も帰りは自分一人で歩けてたけど、お腹痛そうなのが見ててオレもきつくなった。ウヴィーンって音、あれがいけない。あれが振動すると鴉岬がおかしくなる。 「本当に、すまない……」  身体を壊しそうな激しいオナニーはやめたほうがいいと思うな。 「なぁ、鴉岬。ヌいてやるよ。ついでだしさ」 「………い、いい!」  意外とあっさりと認めてて、まぁ、隠しようないもんな。 「カラダ壊すぜ。それになんか、もうただのオナニーじゃなくて、自傷行為の領域に見えるんだよ」 「ぁ、島莱には関係………あるな。んっ……」  ここで喋りながら喘がれると思わなくてオレもびっくりした。 「こうしなきゃ、鳳翅は、俺のことなんて……」  鴉岬って会社ではすごいエリートで、出世街道まっしぐらなんだよ。そこそこモテるし。まぁ、他にモテるのがいるからあれだけど。オレはすげぇやつと同期になっちゃったなって思ったのよ。でも色恋になるとホント、ダメなんだな。

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