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第10話 「―はいいけど、キスはなぁ…」 10

 鴉岬(あんざき)は上半身は壁に押し付けてたけど、尻はオレに突き出してたから、オレもピストンしやすかった。ぱんぱん音するのが、しちゃってるな……って実感湧いてキた。手、重ねてた壁に標本みたいに貼り付けておくのもなんかめっちゃヨかった。 「あ……っ、あっ、あっ、とうらぃ……」  何かして欲しいみたいで、身体捻ってこっち見てきたケド、どうして欲しかったのか分からなかったし、ぴんっ、て勃ってるびーちくに目がいって、触りたくなったから多分コレかな?ってこりこり乳首摘んで捏ねた。 「あ、はぁんっ、あっ、あっ……」  鴉岬はまた体勢直して、オレのおちんちんキュッキュッ締めてくる。鴉岬、乳首好きなんだよな。かわいい声が乳首抓るオレのリズムに合わせてきてるのか、オレがえっちな声に合わせちゃってるのか分からなかった。 「あんざき、きもちぃ?」  自分で聞いたオレの声が、思ってるよりどろっどろのとろっとろっで子供みたいに甘ったるかった。 「きも………ちぃ、」 「おしりと乳首、どっちがいい?」 「ちくび………ちくび、やめない、で………」  鴉岬も会社じゃ絶対そんな声出さないだろって甘~い声だったし喋り方だった。 「ちんちん自分で扱ける?」  オレがぱんぱん突くと鴉岬はがくがく揺れる。でもそのときだけは、自分で頷いてた。 「じゃあ、乳首とおしり、きもちヨくするからね」  びーちくカリカリしながらきっついのにふわふわの鴉岬のお尻の孔をたくさん点いた。ぶつかるのも楽しい。 「あ、あっあっ、あっ、あっ!」  ちんちん扱いたほうが気持ちいいと思ったケド、疎かになってるところを見ると、おちんちんの射精する気持ち良さは、お尻の孔ずこずこされる気持ち良さにとっては雑味なのかもなって思った。美味しいもの足す美味しいものは必ず美味しいものになるとは限らないように。 「とうらぃ………っ、う、んっ、あっ、あっあっ、」  また鴉岬はオレに用があるみたいだった。立ったままでするのキツいんかな。実際、鴉岬が下に落ちちゃいそうになってて、適度に腰抱いたりして支えなきゃならなかった。 「う~ん?」  ちょっと赤みの強いピンク色の口の中が見えて、喉渇いちゃった。生唾が出てきちゃって、ごくんって飲む。オレのコト、泣きそうな目で見てくるのにやっぱり何もしない。 「ベッドでしよっか」  オレは鴉岬のナカから出てきた。そしたら鴉岬はオレのほうに向いてきて、抱きついてきたからちょっとびっくりした。正常位でしたかったんだなって。そら立ったままじゃムリだよ。さすがに鴉岬持ち上げたままエッチはできない。 「ん……危ないよ、鴉岬」  オレに抱きついて、そのままベッドに倒れ込もうとする。オレが咄嗟に受け身とらなきゃ押し潰しちゃうところだった。 「とうらい……」  鴉岬だよな?ってくらいめちゃくちゃ甘えてきて、酒入ってんのかな。えっちでナチュラルハイ?  甘酸っぱい系のシャーベットみたいな蕩け方するベロが唇舐めてて、つやつや光った。また喉が渇く。 「チュウ?」  チュウしたいのはオレのほうなんだケド、こうなると鴉岬はやっぱりノリがよかった。頷いてくれたからチュウしながらまた鴉岬のナカ入った。溶かしたチョコに口付けるみたいな、とろ……ってした柔らかさの後にチュウしてるんだなって質感きた。 「んっ………んっ、ああっ」  手握って、鴉岬のベロをれろれろする。ざらざらしてるし、ちゅるちゅるもしてる。鴉岬の脚がオレの腰に絡みついてきた。オレ動いてないのに、ベッドがゆっさゆさ揺れてるのは、鴉岬が自分で動いてて、オレのコトをディルド扱いしてるのがすごくよかった。あんなリストカットと変わらないようなオナヌーするくらいなら、オレのおちんちんでオナヌーしてたほうがいい。 「ん………っ、ん、んっ………く、んんっ」  ちんちんをくちゅくちゅ柔らかく扱かれてる感じが、もうオレも動かなきゃいけない気にさせる。  手を繋いでたけど、外して鴉岬の頬っぺに支えた。動いたらチュウがズレちゃいそうだった。鴉岬はツラの皮が薄い。変な意味ではなくて、物理の話。骨っぽい。  チュウが気持ち良すぎて、頭ボーッとしながら鴉岬の気持ちいいところ突いた。 「ふ、ぅんッ、んっ、ぁんっ」  頭とちんちんが気持ち良くて、ただのセックスと違う。えっちな気持ちが高まっちゃって、臍の辺りもじわ~って、ちんちんに血を送ってるみたいな変な気分。キンタマもどぅくどぅく。ぴゅんって身体の中に跳ねていきそうだった。  もう少し鴉岬と遊びたかったケド、もうイっちゃいたかった。でもイきたいときにイくのは、そんなのオナヌーでいいじゃんね。 「は、ぁ、んっ……とうらぃ……」  鴉岬の手がオレのこと突き放す。口から透明な糸が出てきちゃってた。 「あんざき……?」 「イって……いいから……我慢、するな」 「ほんとぉ?イっていいん?中に出しちゃうよ?」  腰をぐって深く挿れた。鴉岬のナカがひく……ってして、鴉岬のほうがイきそうじゃん。 「出してくれ」  鴉岬はオレのコト、抱き締めてくれた。首の両脇から腕通して頭抱かれるの、よかった。オレは腰大きめに振った。鴉岬のお尻の穴に釘打つみたいにずぽずぽ出し入れする。 「んぉ、っあっ、あっ、ああっ!」  オレってろくでもないなって思った。鴉岬のコト道具扱いしてるのがスゴく気持ちよかった。 「あんざき、ごめっ……、あっあっ、出る………っ、イきたい、あんざき………」  ちんちん出し入れするの止まらなかった。鴉岬の腰痛めちゃいそうなのに。ばちゅばちゅ音してて、ローションのねばねばが纏わりついてる。 「あ、!とうらぃ!とうらぃ!」 「出る、あんざき!ちんちんイっちゃう!」  鴉岬は一際、お尻の孔を締めててくれてた。精子出すのもう止められなかった。射精が始まっちゃって、頭の中スーって真っ白になる。  びゅるる!びゅる、びゅる、びゅくびゅく……って少しずつ短くなってくけど、おちむちむのなかをどろどろのじゅるじゅるなザーメンゼリー駆け抜けていく感じが気持ち良すぎてちょっと間、言葉が出なかった。 「あ………すごい、ナカ………キてる…………とうらい………」  イってるおちんちんは敏感で、感じすぎちゃうから少し腰引いてたのに、鴉岬はその分も腰突き出してきて全部入れちゃった。 「あんざき、きもちぃ……」  賢者タイムがなかった。オレはべたべた鴉岬に触って、頬擦りして、腰はちょっとカクカクした。最後の一滴、残り滓ザーメンを奥の奥に出したい本能。 「ふ、ぁ、あ、あ、あ、あああ……!」  激しいガン突きからちょい、ちょいって突いたので、鴉岬もイっちゃったみたいだった。オレが鴉岬の頭を肩に乗せて抱き締めちゃって、その身体がびくびくしてるのがよく分かった。ガンガン突いて感度高めてペースダウンしてちゃんと突くと、丁寧にイけるのかもな。鴉岬はがくがくのびくびくで、イってて敏感になってるのに身体痙攣しちゃうから腰揺れちゃってオレに突かれちゃってる。 「あんざき……」  鴉岬の頭離してベッドに置いた。涙目だし唇濡れてて、セクシーだった。目が合っちゃって、ちょっと頭浮かしたように見えたから、オレからチューした。イった直後のベロチュウは、本当に窮屈な肉体からの解放ってくらい気持ちよかった。 「まだ、できるだろう………?」  掠れた声しててめちゃくちゃえっちだった。ナカに入っているオレのがまだビンビンなのに気付いてるのも卑猥。 「あたぼうよ」  鴉岬に促されるまま、オレはとりあえずおちんちん抜いた。縦割れのぱっくりした鴉岬の穴からオレのゼリー精液が流れ出てきてるのが見えちゃって、またコーフンしてきた。観てたら、四つ這いになって、尻高くして見せてくれた。タマのほうに落ちていく。 「たま」  なんか面白いから、鴉岬の玉袋つんってした。ふよふよだ。つんつんつんってもっとつんつんする。 「な、……んっ、だ」 「鴉岬のたまたま」  ひくん、って縦割れアナルが奥のほうから動いて、またオレのザー汁が垂れていく。不思議な感じがした。鴉岬が急に可愛く思えてきちゃって。近くに感じてきた。鴉岬のコト何もよく知らないのに、全部知れた気になったし、全部知れる気になった。オレの種汁ここから垂れ流してるだけで。 「鴉岬」  四つ這いになってる鴉岬のこと後ろから抱き締めた。オレの重みに耐えきれなくて潰れちゃってた。 「島莱!」  非難の声がかわいい。オレのコトもっと呼べよ。構えよ。 「あんざき、あんざき」  オレは鴉岬ににゃんにゃんした。こういうところある。すりすりしたくなる。ちんちんおっきくしながら。可愛くないネコになる。鴉岬も仰向けになったから、また正常位に戻った。もうどうしようもなくすりすりしたくなって、鴉岬の口の中吸った。 「ん………っふ、ん………」  たまたま触るの嫌だったみたいだけど、鴉岬のたまたま触りながらチュウしたかった。ちんちんのほうを触って欲しかったのかも知れない。だからまたベロチュウ手コキ。手の中で固くなってるのが楽しかった。 「ん、ゃだ、とうらい………ナカでイきたい………」  オレはぶるるって寒気がした。嫌な感じではなくて、鴉岬をめちゃめちゃにしちゃいたいなっていうヤバい欲求。 「あんざき………あんざき……!ナカでイかせる!」  誘ったのは鴉岬のほうからなのに、オレが誘ったみたいになってるほど、オレはノり気だった。甘えた声で宣言したら、鴉岬はまたうつ伏せになった。鴉岬のナカに帰る! 「ただいま、あんざき」 「あ、あ、ああ……」  入っていくときも気持ちいいみたいだった。ゆっくり入っていったのに、もうぎゅうぎゅうに締め付けてきた。 「すごい、あんざき………とろとろ、で、きゅんきゅん…………ちんちん、溶けちゃう………」  すぐに動けなかった。気持ち良すぎて。オレ、アヘ顔晒してたかもしれなかった。 「は………あ………っとうらい」  鴉岬は上半身起こそうとしてたから、オレもちょっと身体を浮かせた。腕取られて、おっぱいに持ってかれる。ぷっくりこりこりのびーちくが掌に当たった。捏ねてほしいみたいだった。 「ぁ……んっ」  ナカがきゅんきゅんする。リモコンみたいだった。オレは腰動かさないで、びーちくだけ触ることにした。かりかりして、くにくに捏ねて、つんつんつんって突っついた。 「は、ぁ……んっ、んん、」  ぎゅんぎゅんにナカが蜿ってきつくなる。鴉岬の腰が動いて、オレも動きたくなっちゃった。 「あんざきが、先にオレのコト、イかせちゃうね?」 「動い、て………動いて、とうらい…………突いて」  掠れて蕩けた声でおねだりされて、オレも突きたくなっちゃう。けど、鴉岬もこの状況にコーフンしてるみたいで余計に腰揺らしちゃってた。 「あんざき」 「とうらい、突いて………奥、ほしい……」  鴉岬えっちだ。オレ我慢できなくなった。鴉岬の腰掴んで、一心不乱にピストンする。 「ぁんっ、あっ、あっ、あっ、あっ!」 「あんざき、あんざきぃ……」  情けない声が出ちゃった。暑くて熱くて汗が噴き出て、垂れ落ちる。ぱんぱん音がして、腰も止まらない。性欲猿になっちゃった。 「ん、アッあ、っ、あっあっ、」  腰押し付けてぐりぐりするのも気持ちいい。鴉岬の尻が歪んで、それも面白いからやめられない。  鴉岬は上半身を反らせるように起こして突かれてたけど、オレのほう振り返ろうとする。また何か言いたそうだった。なんだろうと思って、びーちくカリカリかちんちんシコシコだと思った。  オレは片方のびーちくをシコってあげることにした。もう片方の手で、オレのおちんちん咥えてるお腹摩った。 「あ……、っは、ぁ……んっ」  泣きそう目がオレのコト睨んできてて、オレはぐんっ、てちんちん叩きつける。 「ひ………、んぁッ」 「どちたの、あんざき」  オレは気持ち良くなると赤ちゃん言葉になっちゃう癖がある。鴉岬の前でも出ちゃった。 「キ……ス、して………キスして、キスして……!」  少しずつワガママっぽくなってくるのがよかった。キス好きなんだな、鴉岬は。  オレはぬとぬとの鴉岬の唇にチュウ!ってした。いっぱいいろんな角度(ところ)から唇吸って、ベロ入れちゃう。鴉岬のベロ吸ってフェラするみたいに扱いた。 「ん!っふ、んん………く、ふぅぅん……」  活塞(ぱんぱん)が要らないまである。もうチュウしてベロを絡ませ合ってれば、オレの脳味噌はとろっとろのぐずぐずに溶けて、ちんちんは反比例して硬くなったし、鴉岬もナカがとろとろふわふわできゅんきゅんに締め付けてきてた。  しつこく鴉岬のベロ追って、ベロでベロ打ち払ったり穿繰(ほじく)ったり、巻きつこうとしたりした。口の周りがべたべたに濡れてくのがもう楽しい領域だった。 「ん、んんっ、んく、ぁ、はああああんっ」  ベロチュウしてピストンやめてたのに鴉岬はずこずこオレにお尻押し付けてイっちゃった。オレのコト、ディルド扱いした。めっちゃコーフンした。鴉岬の生肉ディルドになれて嬉しかった。オレも鴉岬のイきまんにまた出したくなった。 「あんざき……!イく………出る、中に出す………!」 「イってるから………とうらぃ!あっあっあ………またイく、すごいのキてるから………!あああああ、!」  イってぷるぷるしてる鴉岬のこと締め上げるほど抱き締めてちんちんが射精をはじめたときにクロゼットが急に開いた。 「セックスはいいけど、キスはなぁ……」  もう射精止まらないから鴉岬に中出ししてたけど、最悪の射精だった。気持ち良くなくなっちゃった。びっくりして。出てきたのは鴉岬の元カレ、廻須(くるす)鳳翅(あげは)。 「冬海(ふゆうみ)、そんなキスハメ好きだったんだ?自分でおねだりするほど?」  何?なんで?どっから出てきたの?クロゼットだけど、なんで?なんで、ここにいんの?  オレはどくどく鴉岬のナカに精子(せーし)注ぎながら頭の中はてなだらけ。 「鳳翅…………」 「他人棒であんだけアンアン言えれば、もうおれ要らないっしょ」  オレが今鴉岬とエッチしてるのに、廻須鳳翅はイった直後でヘバってる鴉岬のことぺちぺち触った。 「触んなよ」  オレの鴉岬!今は! 「おいおいおいおい。いきなりカレシ気取りか?ディルドくん」  オレはずん、って鴉岬突いた。まだちょっと固かった。 「ぉんっ」 「冬海……マジでお前、チンポならなんでもいいんだな。この雑魚まんこ」  廻須鳳翅はオレじゃなくて鴉岬と喋る。 「鴉岬」  しかも鴉岬のコトいぢめるようなことばっか言う。嬉しいの?オレはヤだ。へバってる鴉岬の上に乗った。抱き締めちゃう。 「おい!人の玩具(オンナ)の上に乗んな」 「今はオレの~」  鴉岬は何も言わなかった。顔見れない。 「冬海。お前からも言ってやれ。生肉ディルドお疲れさんって。冬海?何、お前、泣いてんの?」  え!って思って、オレは鴉岬の顔を見た。鴉岬は本当に泣いてた。 「あんざき……」 「すまない……島莱。悪かった……」  鴉岬からちんちん抜いて、オレは鴉岬の横に寝そべった。廻須鳳翅にめちゃくちゃ睨まれたケド、知らんよそんなコト。 「だいじょぶ?」  頭撫でこ撫でこしたけど、鴉岬はそれ嫌がった。 「人の玩具(モン)に気安く触んな」 「鴉岬のコトいぢめるのやめろよ」  しかも元カレじゃなかった?なんでまだ今カレヅラしてここにいるの? 「冬海。お前から説明してやれ。お前はセフレどころか生肉ディルド。固チン以外に用はないワケ。分かる?同期クン。人のモンに馴れ馴れしくチュッチュしやがってよ。赤ちゃんプレイに冬海を付き合わすな」 「そんな大事なら日頃からもっと大切にしろよ。鴉岬はモノじゃねぇのよ、アイドルくん。観客のコト、かぼちゃかニンジンだと思ってるみたいだケド、カレシならせめて一人の人間として扱ってやれ?このクズ。モラハラが。ドルカス」  オレは鴉岬に添い寝したまま廻須鳳翅を睨んだ。 「やめてくれ………やめてくれ、島莱」  あ、これオレが悪いんだって気付いたね。これ、オレが邪魔なんだ、ってね。鴉岬に言われたら仕方がないよ。オレは素直に負けを認めることにした。仕方ないね。 「冬海はこうされるのが好きなんだよ。おれに、いぢめられるのが。女と結婚しても、手放す気はねぇぜ。オナホとして、家政夫として、暇潰しのおもちゃとしてな」 「お前サイアク!鴉岬の人生なんだと思ってるんだよ」  でもオレも人のこと言えた義理じゃないんだよな。でもここで、そのこと差し引かなくて、オレも同類だから、なんて見過ごして、鴉岬が目の前でそういう風に言われても構わない存在なんだ、ってなっちゃうの、すごい嫌だった。ならないかも知れないけど、嫌だった。 「島莱……やめてくれ。悪かったと思ってる。すまなかった」  オレが悪いし、オレが邪魔で、オレが異物。それはよく分かったよ。鴉岬はまだ廻須鳳翅が好きなんだよな。そら、会社の同期か好きピだったら、ピを選ぶよ。当たり前じゃん。 「鴉岬……分かったよ。帰るよ、オレ。さようなら。また会社でな。そのときは……またいいトモダチとしてよろしく。んじゃ、大事にな」  負けちんぽ。ああ惨め。でもオレらしくもある。どこでこんなことになっちゃったんだろう?首突っ込みまくったから?放っておけばよかったんだな、それが最適解。多分……オレをちょっとスパイスにするつもりだった。でもオレが首突っ込み過ぎたんだな。バカみたいだな。みたい、は余計か。  胸の辺りがぎゅっとなるね。パジャマ抱えて、人の家のパジャマで帰ってんの。バカみたいでしょ。洗って会社で返すんだからさ。てろんてろんに光るパジャマに革靴。イカしたファッション。オレでも着こなせないわ、こんなん。  もう夜も更けてて、通りっぱたの橋で泣いちゃった。別に泣くことなくない?鴉岬と二度と会えなくなるワケじゃないし、セフレみたいな感じになってたのも成り行きだし。元の関係に戻るだけさ。  百合平さんからWINE来てたけど、返す気起きなくて、オレは目玉ぐしぐしして帰った。オレかわいそくない?でもかわいそ~なオレ、かわいくない?そぃで潔く退()けたオレ、かっこよくない?なんて誤魔化してみる。  帰り道は最悪だった。てろんてろんのパジャマに革靴の男がえぐえぐ泣きながら歩いて橋歩いてるんだからそら職質もされる。ケーサツにボロボロの顔見られて惨めだった。でも仕方がない。カノジョにフられた挙句、元カレとの復縁のスパイスにされたって作り話したら同情してくれた。このてろんてろんの服はその元カレの、って説明はホントだけど。  1日くらいうっうって落ち込んだごっこしていたら、少し楽になったというかどうでもよくなった。ま、鴉岬とはまた会えるし、絶交したワケじゃないんだし、そういうコトも生きてりゃあるよなっていう。変にカンケーに名前付いちゃって、気マズいとかも面倒臭いじゃん。またフツーに接せるならこれがベストぢゃね?って思ったら急にすとんって楽になったから、休日は役に立った。  出勤日になって、オレはいつもどおりに出社した。ちょっと遅刻ギリギリだったかも。鴉岬ももう出社してた。向こうは何も言わないし、オレも特に言うコトなかった。いつもどおり。ちょっと切ないのはホント。でもこれが心地良いなって。  で、こういうときに限って、オレと鴉岬がセットでご用命ってワケ!上司を恨んだね。  上司が倉庫でまた詳しい説明して出ていっちゃってさ、 2人して倉庫作業だった。オアツラエムキに真っ暗だし。電気点けるつもりが消してった、あの上司。マジか。  オレは鴉岬とどう接してたのかもう忘れてた。またちょっと泣きたくなってきたケド、それは余計に惨めになるやーつ。オレはフツーを頑張って装った。潔く退けたオレってやつを、オレはオレなりに誇っていたいからさ。 「島莱」  暗くて怖いから泣いてんの、オレ。カワイイでしょ?返事はしなかった。スーマッヒョ点けたら涙目敗走バレるから、あとは鴉岬に任せよって思った。 「どこだ?」 「ここ」  ラックをカンカン叩いた。スーマッヒョ点けろよ、おら。オレのかわいい泣き顔見てドン引けよ。  鴉岬の足音が近付いてきて、パジャマ返さなきゃな、とか返してもらうものもあるな、って思ったりなどした。 「島莱」  鴉岬は暗い中でオレの肩掴んできて、オレは口元が急にぬるってした。オレは怖くなって、突き放しちゃった。暗いから手加減しちゃったケド…… 「"トモダチ"としては、もう無理だ……」  また口元がぬるってした。あ、チュウされてんな、って思ってまた泣きそうになっちゃった。強く抱き締められて、オレまだ色々やんなきゃいけないコトあんのよ?って思いながら、抱き締め返すのやめられなかった。 【完】

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