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第22話

 コラボグッズを片手に交換募集をしている人を探す。  こういうのは、推し以外はどうでも良いと思っている人と全部集めたい人とで熱量が違うから、きっちり見極めてやらねぇとな。  さて、まずは小焼の推しの相方であるハスキーちゃんを探すか。ふゆの推しは見つけられなくてもどうとでもなりそうだし。ここに行くって教えてねぇし。 「すみませーん。どなたかおさがしですかぁ?」  声をかけられたので足を止める。  声の主は青いカバンに缶バッジをビッシリつけていた。主人公のシンタロー推しの人だな。ちょうどおれが持っているのがシンタローだから声をかけてくれたようだ。 「ハスキーかベースを探してて」 「あー、ハスキーありますよ! シンタローと交換してくれませんか!?」  すっげぇ圧を感じる。  あまりの圧に死んじまいそうなくらい圧を感じる。交換して損はしねぇし、互いに良い感じになっから、交換した。そんで、そのまま小焼に渡した。 「ほい、これでシルキーハスキー揃ったな」 「そうですね。しかしながら、ふゆの推しは……」 「そうだなぁ、交換してくれる人がいたら良いけど……」  ふゆの推しのベースはけっこう人気だったはずだ。中古ショップのレートもなかなか高いもんだから、転売目的の人も多いと思う。ふゆは自引きするまでお金落とすタイプだけど、中古ショップで買うほうが高い時もあっから、人気の違いって怖いもんだな……。  おれの手元にあるのはチカちゃんだ。ヒロインだから人気はあるにはあるんだが、ベースほどではない。一番人気はシンタローだから、さっきのお姉さんはすごく楽してゲットしているような気持ちかもしれねぇな。シルキーハスキーなんて原価割れで中古ショップに並んでるくらいだし……。おれの推しのダウナーちゃんなんてもっと下だ。あんなに可愛いのになぁ。 「あり? 何してんだいあんた」 「はるこそ何してんだ?」 「あたいはブレアンのグッズを手に入れようと思ってきたのさ」  とても良いおっぱいの女がいると思えば、おれの元カノの姉ちゃんのはるだった。もう寒いからそんなに胸元が出てねぇけど、ニットでこれだけ胸がわかるってことは、本当に胸がでかいってことで、おっぱい最高だな。 「今来たとこか?」 「いいや。交換を探しててね。ベースがかぶったから、簡単に交換が見つかると思ったら、あたいが求めてるものを持ってる人がいないんだよ」 「へえ。何探してんだ?」 「チカだよ。あたいはベスチカが好きでね。そりゃシンチカが公式だと思うけど――」 「そういう話って公共の場でするものではないって、ふゆが言ってましたよ」 「あ、なんだい。小焼兄さんもいたのかい」  ふゆは小焼に何を教えてんだ。けど、ありがとう。こういう時は感謝する。おれがはるに殴られるかもしれないことを言わずに済んだ。  で、はるはチカを求めているようだったから、ベースと交換してもらった。これで、ふゆの推しも手に入ったし、万々歳だ! 「そういえば、あんたの妹からコスのあわせ誘われたよ。ブレアンあわせするってね」 「へえ、良かったじゃんか」 「ん? あんたも参加するって聞いたよ? 小焼兄さんも」 「聞いてねぇよ!」 「私も聞いてないです」 「そうなのかい? まあ、そのうち連絡入ると思うよ。今回はシルキーハスキーもいるって聞いたから、あたい、楽しみさ」  と言い残して、はるは去って行った。  ふゆのやつ、勝手にコスプレ撮影会の予定ぶっこんできたな……。まあ、夏と違って小焼は記録会も無いから予定を入れやすいとは思うけどよ。おれも塾のバイトってもんがあんだからな! あと、レポート提出だとか色々! 「シルキーハスキーもいるって言ってましたね。顔が解釈違いだと帰りますよ」 「お、おう……。コス撮影には応じてくれるんだな……」  小焼が納得するような顔面の解釈一致双子ロリ魔女じゃねぇとやばいな……。だけど、ふゆの友人関係を考えたら、最高の二人が来る気配がする。  ふゆに連絡してみっか。気になってきた。

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