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第21話

 無事にコラボグッズを貰えたので、夏樹に渡しておいた。  これは夏樹の妹のふゆが好きなアニメ『ブレインアンダーグラウンド』だ。地下世界を冒険する夢と希望と絶望のダークファンタジーだったかなんだかそういうもの。詳しくは知らないが、一度イベントの手伝いでコスプレしたな……。 「そういえば、チカの衣装ってまだ持ってるんですか?」 「おう。ふゆが着ることもあっから置いてるよ。ベースのもあるぞ。着るか?」 「着てどうするんですか? セックスするんですか?」 「おまえはどうしてすぐにヤりたがるんだよ。スタジオやイベントで写真撮影するもんだぞ、ああいうのは」 「はあ」  よくわからないが、イベント会場で何度も「撮影して良いですか?」と言われたことを思い出した。夏樹は女キャラだったからか下着を撮ろうとしているやつもいたな……。あれは悪いやつだと私でもわかる。  さて、スポーツゲームが楽しめる施設に来たのは良いが、夏樹がこういうのを楽しむとはどうも思えない。どちらかというと室内でボードゲームをしているようなタイプだと思う。 「夏樹って運動好きですっけ?」 「嫌いじゃないぞ。なんといっても、おれはスポーツ医学専攻だからな!」 「そうでしたね。超ド級のマゾヒストスポーツドクターですもんね」 「違う違う! そんな恥ずかしい肩書ねぇから!」  だからって、普段の超スーパーなんたらスポーツドクターも恥ずかしいと思うんだが、言わないでおくか。  夏樹は頬を膨らませているので、可愛らしい。背が低いこともあって、小動物のような愛らしさがある。 「で、何するんですか? とりあえず、夏樹が的になって私がボール投げましょうか?」 「そういうプレイする場所じゃねぇから。迷惑行為になって出禁くらうぞ」 「プレイボールっていうのに……」 「意味が違うっておまえが一番わかってるようなボケすんな」 「では、何するんですか?」 「そうだなぁ。……おっ、あれどうだ?」  夏樹が指差した方を見る。ロデオマシンがあった。  女が振り回されて落っこちているのを見るのはとても気分が高揚する。夏樹にしては良いチョイスだと思う。だが、これは見るものではなく、乗るかという話のはずだ。 「私は見てます。夏樹乗ってきてください」 「おまえ、騎乗位で力尽きる女でも想像してんじゃねぇよな?」 「いえ、無様に振り落とされて腹を踏まれてぐちゃぐちゃになるほうが興奮しますね」 「……その趣味、外であまり言わないほうが良いぞ。おれだから良いけど、けいちゃんだとドン引きもんだ」 「けいのような腹の丸い女は思いっきり腹に拳をめり込ませてみたくなりますね。しませんので安心してください」 「したら事件になっから!」 「しませんよ。夏樹ぐらいにしか」 「おれも叩いて良いってわけじゃねぇぞ」  と言いつつ、順番が来たので、夏樹はロデオマシンに乗る。  周りに観衆がいるので、注目の的になっている。夏樹は注目されると興奮するようなやつだから、これは存外気分が良くなりそうだ。  ロデオマシンの案内には、60秒耐えればコラボグッズプレゼントと書いていた。だからさっきから女が並んでいるのか……。ブレインアンダーグラウンドは女性ファンが多いらしいからな。  夏樹の体幹は意外にもしっかりしているようで、60秒乗り切った。記録は145秒だったので、コラボグッズを2個貰っていた。 「いえーい! 2個ゲット!」 「良かったですね」 「絵柄確かめるまではどうだかなぁ」  そういえば先程から銀色の袋を渡されていて中身を見ていない。中身はランダムらしいので、推しが当たるかどうかは運次第のようだ。まあ、ゲームの挑戦に制限はないようだから、何度も挑戦すれば良いとは思うが……、体力自慢でないと難しいと思う。 「小焼の推しのシルキーちゃん当たったから、やるよ」 「ありがとうございます。ハスキーは?」 「いねぇな。ふゆの推しも交換してもらえたら良いんだけどなぁ……」  夏樹は辺りを見回しながら歩いて行くので、後ろをついていくことにした。

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