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第24話
「いだだっ! 首が締まるだろ! 何だ?」
小焼は黙って綿菓子屋を見ている。やっぱり食べたくなったのかと思いきや、見ているものが綿菓子ではないことにすぐ気付けた。
さっきサイン会をしていたアイドルが綿菓子を買って店内で互いに撮影している。2人並んで頬をくっつけて自撮りしている姿はそりゃあもうメロメロになる可愛さだ。小焼も可愛い推しの姿を見れてメロメロだと思う。表情は全く変わらねぇけど。
「やっぱり綿菓子買うか? 今なら推しと写真撮れそうだぞ」
「プライベートな時間を邪魔するわけにはいかないので」
とは言うけど、ガン見すんのは良いのか? まあ、無断で写真撮影してねぇし、見てるだけだから許されんのかな。あっちは気づいたっぽいけど。
メイちゃんが駆け寄ってきた。
「なちゅちゃんなの! また会ったなのー!」
「あー、その、今、女装してねぇから、夏樹って呼んでくれ」
「じゃあ、夏樹くんなの。ふゆちゃんから連絡貰ったなの。うちとけいちゃんでシルキーハスキーのコスプレするなの。よろしくなの」
「こちらこそ、妹に付き合ってくれてありがとう。よろしくな」
メイちゃんーーオフモードだから、いちかちゃんはおれの手を掴んでニコニコしている。
小焼は何してるかと見たら、けいちゃんの綿菓子を食べていた。ま、まさか、奪ってねぇよな?
「おい小焼! それ、けいちゃんの綿菓子だろ?」
「貰いました」
「ウチ、こんなにおっきいの食べられへんから……」
「もう一度言ってください」
「え? こんなにおっきいの食べられへんから……」
何で2回言わせたんだよ。けいちゃんに「おっきい」を言わせたかっただけか?
いちかちゃんがけいちゃんの横に行って「うちの真似してなの」と言う。何すんのかと思ったら、いちかちゃんの真似をけいちゃんがしたことにより、エロ漫画でありがちな一つの棒を2人で舐めるようなポーズになった。
「写真撮って良いですか?」
冷静に撮影許可を求めんなよ! と言いかけてやめた。言うと睨まれるだろうし、最悪の場合はワンパンで天国行きだ。小焼のパンチは手加減されないので、いつでも全力必殺技になる。
さて、小焼は2人を撮影して満足そうだし、2人もオフモードだからこれ以上ファンサしてもらうのも迷惑だ。ふゆへのお土産に綿菓子を一つだけ買って店を出た。
「けっきょく綿菓子買うんですね」
「あれだけ店内で遊んだからな。あと、ふゆも綿菓子食べたいだろうしさ」
「夏樹って優しいですね」
「おっ。もっと褒めてくれて良いぞ!」
「……良い子良い子」
頭を撫でられるのは好きだ。小焼のあったかい手で撫で回されるのが好き。いや、もう、触られるのが好きなんだな! つまり、全部、好き!
歩いて小焼の家に戻る、前に、おれん家に寄る。ふゆに綿菓子を渡したいし、コスプレ撮影会について聞いておきたい。あと、おれ、小焼と同棲するし、ふゆにだけはきちんと伝えとこう。小焼には先に帰ってもらった。
「お兄ちゃんおかえりー。わっ、何それ!?」
「お土産の綿菓子。あと、コラボグッズやるよ」
「やったー! ありがとー! お兄ちゃんすごい! 天才!」
コラボグッズを受け取ってふゆは大喜びだ。パソコン画面にどえらいエロ絵が映ってるけど見なかったことにしよう。
「あと、おれ、小焼と同棲すっから、だいたいあっちで寝泊まりするよ。父ちゃん母ちゃんに言っといてくれ」
「同棲するの!? 毎日ヤるの!?」
「さすがに毎日ヤらねぇよ! 小焼に殴られるだろ!」
「それもそっかぁ! お幸せにー!」
話が早くてあっさりしてて良いもんだ。これでおれは小焼ん家に住むって、両親に伝わる。
それよりもコスプレ撮影会について聞いておかないとな。
「コスプレすんだよな?」
「そっ! カメラさんも見つかってるよ。普段、いちかちゃんを撮影してるプロの人!」
「プロ中のプロじゃねぇか」
「えっろい撮影もできるスタジオにしたから、カップリング撮影もしようねぇ。えへへへ」
「シンベスのか?」
「あ! やばい! あたしが攻めなきゃいけないじゃん!」
「シルキーハスキーにメロメロなベースもいるけどな」
「公式のベースもシルキーハスキーにメロメロだったから解釈一致! 楽しみ!」
ふゆは大喜びだ。にやにやが止まらない程度には喜んでいる様子だった。
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