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家族[3]

認められないって思ってた。 悠さんが、自分はお母さんに愛されていないって、存在を認められていないんだって、そう思っている事が悲しかった。 麗さんは悠さんがゲイであることを認めていなかったから、挨拶に行っても誰にも……相手にもされないかもってそう思ってた。 だから、悠さんが自分はちゃんと愛されてたんだって気付いてくれて、しかもお母さんも妹の麗さんも俺達の事を認めて受け入れてくれて、本当に嬉しい。 俺はばかで、ゲイの人たちの苦労も知らないで、好きってことは素敵なことだから尊い想いなんだ、なんて軽い感じにそれを当たり前に信じてて…。 悠さんが俺のこと心配して、ゲイ婚のこと良く考えてくれって言った事にだって、気付けないで、一人イジケただけだった。 世の中は俺が思っていたよりも、ずっともっと複雑で、なのに矢鱈と単純明快。 自分の理解できない事はとことん嫌って排除しようとする人が、巨万と居る。 だから悠さんは、そんな人達から俺を守ってくれようとしてたんだよね。 俺も、守りたいよ。 悠さんのこと、傷付けようとするすべての悪意から、心ごと───守りたい。 「俺、一人っ子だから、兄弟いっぱい欲しかったんだ」 ぎゅっと背中に回した手に力を込めると、悠さんがフッと優しく笑った。 「なんだよ。俺のことを兄貴扱いか?」 「違うよ。悠さんは、俺の大事な旦那さん、だろ?」 「そうよ。私が皐月の妹」 麗さんが頭を撫でてくれると、悠さんも負けじとお尻を、……いやいや、今それはおかしいから!悠さんっ! 「あっ……、でも麗さんは、お姉さんがいいなっ」 あがってしまった声を誤魔化すために、思いついたふりをして。 割れ目に食い込んできた手を振り払って、悠さんの腕の中で身体を反転させる。 「それじゃあ、私は可愛い弟を思い切り甘やかしてあげるわ」 麗さんが、輝く笑顔で覗き込んでくる。 「うん!綺麗なお姉さん、嬉しいな」 「皐月、本当に嬉しいのか?お前を甘やかすのは俺だけの特権だと言っただろう?」 悠さんが、からかうように苦笑する。 大好きな悠さんと、 お姉さんになってくれた麗さんと、 それに、お兄さんみたいなリュートさん、 皆と出逢わせてくれた今一番仲の良い友達・夏木は、リュートさんとラブラブで……。 悠さん達が家を出てThe ENDって言ってた小雪さんは、こうして手作りのご飯を贈ってくれて。 うちの親たちも悠さんのこと、認めて好きになってくれた。 全部が嬉しくて、幸せすぎて怖いくらいだ。 「皐月」 低くて心地の良い声。 悠さんが後ろから顔を覗きこんでくる。 大好きな匂いがふわりと香る。 高身長、長い四肢に、整った容姿。 優しくて、おっきくて、あったかい人。 こんな素敵な人に、愛されてるんだよな、俺……… なんでだろう?って考えると、今でもよく分からなくて不安になっちゃうけど。 「───悠さん。俺のこと、誰より一番甘やかして、誰より一番、愛してください」 振り返って抱きつくと、悠さんが強く抱き返してくれた。 麗さんが、呆れたみたいに笑ってる。 そして悠さんは麗さんの目の前で、まるで彼女を証人にするかのように、 「幸せにするから、皐月───。お前もずっと、俺のことだけを愛しなさい」 深くて永い、誓いのキスをくれたのだった。 --------- 『伝えたい未来』 ☆☆Happy End☆☆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 『100万円の恋人』本編はこれにて完結です。 ここまで皐月と悠、そしてリュートと功太の物語を見守ってくださり、ありがとうございました。 悠も最後は家族とうまいこといって大団円───なのですが……麗も小雪ママも、皆様に嫌われないといいなぁ…なんて、作者()心に思っております。 さて、本編はおしまいですが、今後番外編をいくつかご用意しております。 リュートが夏木家へ挨拶に行くお話や、ギャグっぽいSS、ローズに最大のピンチが訪れたりもします。それから妖しい薬のお話も… 今少し、4人にお付き合い頂ければ幸いです。 真宮寺うさぎ 拝

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