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これが夏木家です[1]

「何も無いところだけど、ゆっくりしてってね」 お茶を出した母親に、リュートさんが綺麗な笑顔でお礼を言う。 「おー…、本当に美人だなあ」 父さんが感嘆の溜息をつく。 「スゲーな功太。初めての彼氏だろ?」 兄貴は腕組みして、感心したように何度も頷く。 「ホントに…、まさか功兄(こうにい)にこんな美人が…」 大学生の弟、涼太(りょうた)はリュートさんを前に唖然としてる。 そして、リュートさんをちょー美人の男の人と称した高校生の奏太(かなた)は、兄貴の恋人───衝撃の美人を前に緊張しまくっていた。 ───つか、なんでこんな自然に、男の恋人受け入れられてんの!? うちの家族、常識ねーの!? ちったあ驚いたりとかさあ……… …いや、嬉しいけど……? 「……あの、こちら香島リュートさんです」 「香島リュートと申します。本日はお忙しいところ、お時間を作って頂きありがとうございます」 スッと伸びた背筋。キュッとくびれた腰、小さくて滑らかなお尻……じゃなくて! 姿勢を褒めようとしたんだった。 リュートさんの体付きがエロい所為で、つい脱線しちゃったじゃないか。 「……ハッ!功太の父の福太(ふくた)です」 って、なについ見惚れちゃってんだよ親父も!! うちの父さんは、威厳はあんまり無いけど、ビールっ腹のちょい太めの身体でいつもニコニコしてるから、部下からは『福の神』なんて呼ばれてるらしい。 「母の史香(ふみか)です。そんなに畏まらなくていいんだからね。うちはこの通り、男ばっかりのむさ苦しい家なんだから。リュート君は男の人なのに綺麗ねぇ。掃き溜めにパッと花が咲いたみたい」 「いえ、そんな…。ありがとうございます」 母さんは、史香なんてキレイめな名前なんだけど、どっちかってーと肝っ玉母ちゃん。 今日は大分猫被ってる。 「俺は、功太の兄の──」 「左から、壮太(そうた)涼太(りょうた)奏太(かなた)。俺含めて四人兄弟」 3人もバラで自己紹介されたら鬱陶しいから俺から紹介してやったってのに、 「まとめんなよ!!」 壮太に思いっクソ怒鳴られた。 何だコイツ、リュートさんが綺麗だからって、色目使うつもりじゃねーだろーな!? 「お前こそ、リュートさんの前でカッコつけてんじゃねーよ!」 「はぁ!?別に俺はいつもこうですけどー?」 「声!作ってんだろーが!」 長男の壮太とは年子で、年が近いせいか昔は散々喧嘩した。 まあ、年下の俺が常に負けんだけど。 あいつ、弟相手に全然手加減しねーから。 「兄さん達、やめなよ。リュートさんが驚いてるよ」 俺とは5つ離れた三男の涼太はそんな俺達をいつも宥めて止める役。 俺達がこんなな所為か、逆におっとりとした優しい子に育った。 「あのっ、壮太と功兄は喧嘩すると殴り合うんで、危ないからこっちへ…」 そして、超絶美人に緊張しながらも、いいとこ取りしようとする世渡り上手の末っ子、奏太。 「リュートさん、殴り合わないから、こっち」 腰を引き寄せると、リュートさんはまさか家族の前でと驚いたらしくて、赤くなった顔を困ったように俯けた。 「んで、……俺、リュートさんと、結婚したいんだけど…」 流石にコレ言い出すのには、声が震える。 そのつもりで付いて来てもらったんだけど、世の中、話に聞いた広川の家みたいな親ばっかりじゃないし、ゲイだってことも家族には言ってない。 でもやっぱり俺だって、あんな幸せそうな広川と香島さんの姿見ちゃったら───認められたい、って欲が出る。 リュートさんにもそれを感じて欲しいって、そう願ってしまう。 だから。 「俺達の事、認めて下さい。お願いします」 リュートさんとの未来の為だったら、俺はいくらだって頭を下げるし、幸せになる努力もしたい。 隣でリュートさんも頭を下げている気配がした。

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