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これが夏木家です[2]

【夏木Side】 リュートさんと2人、頭を下げ続ける。 どんな言葉が返ってくるのか……、ハッキリ言って、怖い。 普通に結婚の申し込み行くんだっておっかないだろうに、俺たちはどうにも特殊すぎて…… やっぱり、親の反応は怖い。 気配の先で、親父が胡坐の足を動かした。 身じろぎっつーか……。 緊張してんのは、こっちだけじゃないのかもしれない。 そして、親父が口を開く。 「リュート君は、功太でいいのかい?」 やたらと軽い声音で。 ずるりと力が抜けた。 「はいっ、勿論ですっ!功太…っさん以外、有り得ませんっ!」 リュートさんは緊張してるのか、やけにスタッカートの効いた口調で答えた。 つか、つーかさ?『功太さん』だってさ。 リュートさん、かわいい~っ! 俺以外有り得ないって。 俺も、リュートさん以外有り得ねーし。 「てか、待て待て親父!ナニその質問!?」 「いや~、不肖の息子に良くこんな美人が引っ掛かったなあ」 「美人ッ…だけど……」 やっぱり大丈夫か、この親父!? 他に言うことなんかあんだろ! 「リュートさん、男なんだぞ!?ちゃんと分かってソレ言ってんの!?」 隣から、ひゅっと息を飲む音が聞こえた。 あー、違う違う。リュートさんを否定したかったわけじゃなくて! ヨシヨシ、と頭を撫でると不安そうに見つめられた。 「だから、えっと……」 誤解を呼ばない言い方……、あー、なんつったらいいんだ? 「功太から結婚したい人を連れて来たいって連絡が来た時、母さん心配したのよ。無理に彼女作って、親を安心させようとしてるんじゃないかってね」 「……いや、安心させるなら壮太が先だし」 何を言い出したのか、母さんは何時もよりも深く母親の顔をして、俺を見つめてくる。 そして、俺が夢にも思わなかった言葉を、投下した。 「だって功太、男の人が好きなんでしょう?」 「─────はあっ!?」 えっ、なんでだ…!?俺、そんなこと家族に一言も……、えっ、待て、なにが…なんだって……!? 「なんとなくね、分かるのよ。母親だからね」 「っ……母さん………」 「だぁってアンタ、中高遊んでる友達の中に、必ず1人は可愛い子居たじゃない。やたら気ぃ遣って、なのにやたらに構って怒られてたり」 「ちょっ!ちょっとやめてくれる!?リュートさんが焼くから!」 「あら、焼いてもらえるの?良かったねぇ」 チラリと隣を伺うと、リュートさんは耳まで真っ赤に染めて俯いていた。 照れてんだな。可愛いなぁ…。 親の前だってのにムラムラする。 「だから、功太が結婚したいって言った時、自分の気持ちを誤魔化して女の人と一緒になろうとしてるのかもって心配したの。 相手が男の人で、しかもこんな美人で、功太のことを愛してくれてる人で、お父さんもお母さんも大歓迎よ」 「母さん……」 ヤバい…、これか!広川が泣きそうになったって言ってたのは……。 ホント、泣きそう。 なのに目の前で一瞬でもムラムラしちゃって、母さん、ごめん! 隣から、ずっ、と鼻をすする音が聞こえた。 ねえ、リュートさん…… 俺の家族も、温かいだろ? 今日からリュートさんも、うちの家族なんだからな。 「ありがとう。父さん、母さん」 涼太が渡してくれたティッシュをリュートさんの鼻に当てる。 見つめる瞳が、うるうると濡れて光ってる。 抱きしめて欲しいんだよね? でも親の前だから、抱きつけなくて躊躇してる。 鼻をかんだティッシュを受け取って、ゴミ箱に放り投げる。 そして俺は振り返って、 「一緒に来てくれてありがとう」 まだ潤んだ瞳で首を横に振るリュートさんを、思い切り抱きしめた。 「っ…功太!?」 「いいの!スゲー好きっ!」 「あのっ、でもっ」 「ホントはこうして欲しかったくせに」 皆に聞こえないように耳元で囁くと、リュートさんは腕の中でコクンと頷いた。

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