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番外編『相対する立場に置いての考え方の違い』

タチの人たちってちょっと変態。 大好きだけど、ついてけない! 普段の『100万円の恋人』とはちょっと毛色の違った番外編。 ギャグ風味の短編です。 皆様に楽しんで頂けますように(*˘︶˘人)♡*。+ ------------- 『関谷君と夏木君』 ある日のローズ。 今夜は悠さんが取引先と食事をして帰ると言うから、俺は1人で夕飯を済ませて3階へと下りてきた。 悠さんが居ない日はご飯を作るのも面倒で、ついコンビニ弁当になりがちだ。 けど、1階のコンビニの店長・春美さんが「バランスよく食べなきゃダメよ!」って廃棄になったばかりのサラダをこっそり付けてくれたから、きっと身体に悪くはない筈。 春美さんおススメのチキン南蛮弁当とグリーンスムージーも美味しかった。 電話で呼び出した夏木と並んで飲んでいると、来店した常連の関谷くんが夏木の向こう側の席に腰を下ろした。 「いらっしゃいませ、関谷君」 「こんばんは、リュートさん」 「ミヤちゃんと待ち合わせ?」 「はい」 関谷くんが頷けば、リュートさんは『予約席』と掘ってある銀のプレートを手渡す。 「どうぞ」 「ありがとうございますっ!」 お礼を言って受け取ると、関谷くんはそれを夏木とは反対側の隣席に置いた。 それから、顔見知りの俺達にも会釈する。 「こんばんは、夏木君、広川君」 「こんばんは」 「こんばんは~」 俺はひとつ離れた席にいるから、夏木よりもちょっとおっきな声で手振り付き。 関谷くんは少し恥ずかしそうに手を振り返してくれた。 関谷君と恋人のミヤちゃんは、ここ──ローズで出逢って結ばれたカップルだ。 ローズは一部では『縁結びスポット』と呼ばれていて、リュートさんは、愛の女神様ーヴィーナスーと崇められているらしい。 男なんだけど、女神様。 リュートさんの耳に入ったら、ショックを受けちゃいそうだ。 体育会系とインドア系。 タイプは全く異なるけど、同じゲイのタチ同士なせいか、夏木と関谷くんは意外と気が合う。 今夜も、一緒に飲んでた筈の俺をそっちのけで話が盛り上がってる。 「会社で好みの女性のタイプ訊かれたんだけどさあ、困るっつかさー」 「分かります分かりますっ! でも、夏木君はイケメンだから訊かれるんでしょう?僕なんか、どんな女の人にならアンタでも相手してもらえると思う?って訊かれ方で…、女性、怖いです」 「関谷君こそ、前髪切ってさあ、コンタクトにするとか、眼鏡オシャレなやつにしたらモテんじゃないかな。って、別にモテたくないか」 夏木が1杯目のビールを空にすると、リュートさんがすかさず2杯目のラムのグラスを差し出す。 ホント、良く出来た奥さんだ。 夏木がお礼を言えば、白い肌の頬を赤く染めて微笑う。 かわいいっ! と、つい見つめてしまえば、 「皐月くん、何か食べる?」 リュートさんは不思議そうに首を傾げた。 俺のグラス、まだ半分ぐらい残ってるもんね。 お替りじゃないのになんで見てるんだろう、って。 そりゃ、リュートさんが可愛いからだけども!! 「んー…、じゃあ、チーズください」 今飲んでるのが赤ワインベースのカクテルだからとお願いすれば、リュートさんは「ちょっと待ってて」と住居スペースの方へ姿を消し、 「どうぞ。夕飯の残りだから、これはサービス」 冷蔵庫からカプレーゼを持ってきてくれた。 トマトとモッツァレラチーズのサラダのドレッシングはリュートさんの手作り。 皿の端に生ハムも乗ってる。 「うわっ、ありがとーリュートさん。豪華~」 夏木にも頂きますを伝えて、フォークでチーズとトマトをまとめて刺した。 その間も、夏木と関谷くんの会話は続いてる。 関谷君は、俺と夏木と同い年。 システムエンジニア、俗に言うSEって仕事をしてる。 コンピュータ系には強いけど、世間の流行には疎い。 「僕は所詮オタクなんで…」 ってのが関谷くんの口癖。 だけど、眼鏡と前髪に隠れた瞳はとっても綺麗で、地味に見える顔も実は整ってることを俺は知ってる。 でもね、ミヤちゃんが「俺だけ知ってればいいから…」って、顔を朱く染めてそう言うから、 「僕はこのままでいいんです」 って、関谷くんは幸せそうに笑うんだ。 黒縁眼鏡の奥の、優しい瞳で。

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