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ネコとタチとの嗜好の違いは愛し方の違いのせい…なのか
その時、ドアベルがリンリンと音を立て、新たな来客を知らせた。
「いらっしゃいませ、ミヤちゃん」
「こんばんは、リュートさん」
控えめな声が聞こえて、ミヤちゃんが店に入ってくる。
「ミヤちゃん!」
嬉しそうな関谷くんの声。
ミヤちゃんを迎えようとカウンターチェアをくるりと回転させる。
だけど、関谷くんの元へ向かおうとするミヤちゃんを邪魔するように、俺は彼の目の前を塞いだ。
「ミヤちゃん、こんばんは!今あっち行かない方がいいよ!関谷くんが主体となって変態トークがなされてるから!!」
「えっ、変態トーク?」
目をパチクリして、首を傾げる。
「うん。あの人たち俺達にね、短い白シャツだけ着けさせて、後は裸にひん剥いて、下半身丸出しにして縄跳びさせようとしてる!」
「裸で縄跳び…?」
ピクリ、と眉根を寄せたのは、新規のお客さん、葵くんだ。
「いや、だからな、皐月…」
だからも何も、アンタは妄想でち○こおっ勃ててただろーが!
「あの人たちキモいから、俺たちはあっちで3人で飲も。ね?」
「うん。あっちで飲む」
ミヤちゃんが関谷くんのキープしていた左端とは真逆の右側へ向かうと、葵くんも黒羽さんに蔑みの一瞥をくれてから元の右端の席へと戻っていく。
俺も2人の後を追って、右から3番目の席へ腰を下ろした。
「リュートさん。リュートさんもあっち行っちゃだめ。妄想のネタにされちゃうから、こっちにいよう」
「ふふっ。じゃあそうしようかな」
悠さんはまだ、未練がましくこっちを見てる。
夏木は何かに怯えたままだし、関谷くんなんか青ざめてワナワナしてる。
赤瀬さんと黒羽さんは呑気なもので、
「どうやら嫌われてしまったようだね」
「ははっ、ただでさえ俺、心開かれてないのに~」
なんて何処か楽しそうだ。
リュートさんが、ミヤちゃんの頼んだカクテルを「おまたせ」とカウンターテーブルに置く。
「リュートさんも何か飲も。悠さんのおごりー」
誘えば微笑って頷いて、カシスソーダを作った。
「じゃあねじゃあね、グラス中途半端だけど、葵くんにはじめまして、よろしくお願いしますのかんぱーい」
「あ、…ありがとうございます」
「かんぱい」
「乾杯」
4人でグラスを合わせて、笑い合う。
俺はなんだか楽しくなって、イヒヒって顔になってる。
リュートさんは、いつもの綺麗で優しい笑顔。
ミヤちゃんは少し俯きがちに、葵くんは正面を見据えて、だけど2人とも少し恥ずかしそうに目を合わせて、微笑んだ。
「ミヤちゃ~ん…」
関谷くんの泣き声が聞こえる。
「そこで裸で縄跳びしたら、…許してやる」
ミヤちゃんはそんな事をボソリと言って、顔を赤く染めた。
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『相対する立場に置いての考え方の違い』完
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