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ホームレス美少年 1

生まれて初めて、“餌”を手に入れてしまった。 それもかなり極上で美しいものだ。 吸血鬼が猛威を振るっていた頃は、 餌の一匹や二匹を確保している者も少なくなかったが 現代においては人を襲うことすら極めて困難であり、魔法で抑制して数年に一度くらいに血を飲むのが現代吸血鬼のライフスタイルとなっている。 魔法が解けてしまえば、どんなに我慢しても月に一度は捕食しなければ空腹で身体が動かなくなることだろう。 皇を"持ち物"にしたものの、あらゆる支配権は無論彼にあった。 食欲抑制を含めた生活に必要な数少ない魔法のみを返してもらい、あとはまだ彼の手中にあった。 おそらく逃げないように、だ。 本来ならばすぐさま関わり合いを断ちたい所なのだが、 やっと見つけたこの町とこの生活スタイルをそうやすやすと手放してたまるものか。 隙あらば身体中の血を抜ききって殺して差し上げる事も可能だ。 ともあれ当分はあの魔女には近寄らないようにしなければ。 またわけのわからない魔法で襲われてはペースを乱されてしまう。 確実に殺れる!という時までタイミングを見計らわなければ。 月人は完全犯罪計画を着実に練ることにした。 しかし。 着崩したジャージ姿で玄関先に立つ皇は、片目を細めながら眠そうに頭を掻いた。 「....今何時だと思ってんだ。虫ケラらしく外で寝ろ」 皇は地面を指差しながらそう吐き棄てるとだらだらと家の中に引っ込もうとした。 月人は閉められそうなドアを慌てて食い止めた。 「寝れるわけないだろっ!デリケートなんだよ月人さんは!」 「最悪ぼくだけでもいれてくださいっ皇さまぁー」 「あってめェ何抜け駆けしようとしてんだ!お前のせいでこんなことになってんだからな...!」 月人は足元のシロエを睨んだ。 そう、月人はなんと"猫を飼っている"と上の階の住民に密告されアパートを追い出されてしまったのだった。 身寄りもなくかといって容姿端麗文武両道美麗高校生で通しているのに外で寝るわけにも行かず.... 人間に言うことを聞かせる魔法は無論奪われたままで。 結局皇なんかを頼ってきてしまう俺のバカ。と早速後悔している月人であった。 皇はため息をつきながらシロエを抱き上げた。 「お願いの仕方がなってないなぁ? 俺にどうして欲しいわけ?ご主人様?」 シロエを撫でながら敬意の欠片も無い上から目線で言われ、月人は腸が煮えくりかえる思いだったが 暖かくなってきたとはいえ野外で一夜を明かせばいくら吸血鬼といえど風邪を引くこと間違いなしである。 月人はプライドをへし折り口を尖らせた。 「....泊めて...ください...」 「もっと家出少女ぽく」 「....イタズラしてもいーよ..?って何言わすんじゃ!」 「びっくりする程可愛くねえなぁ」 皇は、さむ、と身体を震わせくるりと背を向けて家の中に入って行ってしまった。 ドアは開けっ放しなのでOKしてくれたということなのだろうか。 全く何を考えているのやら..。 月人はどっと疲れを感じながらも家の中に入っていった。

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