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ホームレス美少年 2

必要最低限の魔法しか手元にないため、 またもや人間に怒鳴られてしまった。 ペット禁止と言われているのに置いておいたから悪いのであるが。 ともあれ、大変にプライドをへし折ったとはいえ屋根の下で眠れたのは幸いであった。 布団の有り難みを感じながらも、微睡みの隙間で月人は寝返りを打った。 朝が来る。日の光で体が消滅するなんてことはないが、やはり吸血鬼にとって日光は苦手なものなので 完璧と思われる月人でも朝は少々苦手なのであった。 「....ん....ぬくい..」 いつもとは違い暖かい何かを感じて、自然とそちらに体が寄って行ってしまう。 指先に触れた物体が暖かいものの正体であると本能が気付き、思わず抱き寄せてしまう。 いい匂いがする。 さらさらと肌に触れる糸のようなものに思わず顔を押し付けて、唇で食んでしまう。 「おいボケ何と間違えてんだ?」 不意に降ってきた声に、無理矢理覚醒させられ月人は目を見開いた。 目の前に黒い景色が広がり、頭がついて行かず瞬きを繰り返す。 「寝ぼけてんなぁ月人くん」 だんだんと頭がクリアーになっていき、 月人はその恐ろしさに身体が強張るのを感じた。 恐々と頭を上げると、そこには黒く澄んだ瞳の美人の顔があった。 それが眼鏡のない皇の顔であると理解できると、 思考が急速に回転し背骨からブラックホールに引き摺られるような衝撃が走った。 「おうあああああぇええぇっ!?!?」 そのまま跳びのきベッドから勢いよく落ちた。 こんなに驚いたのは何百年ぶりだろうか、と言うほどだった。 「な、なんっなん!?!?」 「なんでじゃねーよ..床で寝ろっつったのに」 あーあ、と欠伸を零しながら、特に怒るでもなく皇はだらだらとベッドから起き上がった。 抱きついてしまった?ととんでもないことをしてしまった焦りで月人は泣きそうになりながら彼を見つめた。 「......おはよ、月人くん」 朝とは思えないほど色気を漂わせながら皇は微笑み、カァッと頬が熱くなった。 月人は自分が押されている状況に吐き気を感じて勢いよく立ち上がり、奇声をあげながら部屋を脱出した。

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