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極上ノ餌 1
不本意ながら、完璧イケメン吸血鬼月人は超性悪魔女皇に弱みを握られた上に
半強制的に彼の主人になってしまい更には同居生活と相成り、
腹がたつとはいえ極上の餌が近くでゴロゴロしている為落ち着かないので家事を黙々とこなすと彼が喜び、彼が喜ぶと胸が内側から掻き毟られるようにイライラしてしまう悪循環に陥っていた。
とはいえ使っていた魔法の殆どを彼に奪われてしまった為、今は微量な魔法しか使えない。
下手したらポンコツ使い魔のシロエより無能かもしれなかったが恐ろしくて考えないようにしているのだった。
「..ああもう!なんで俺は!こんな!家の!窓を!磨いてるんだか!」
月人は苛立ちながらも、二階の廊下の窓を磨き続けていた。
この家からさゆりさんことたばこ屋の店主が居なくなってから、全く掃除がなされていなかったらしく
埃やら汚れやらが気になって仕方がないのだ。
本当は1秒でも早く出たい所であるが、行き先が決まるまではここで生活せねばならない。
昔とは違い家一つ借りるのにもいろいろと面倒で、更に今は魔法もあまり使えないし...。
はあ、と溜息が溢れてしまう。
「うっお、何してんのお前」
振り返ると丁度部屋から皇が出てきたところだった。
月人は窓磨きを再開させ、これ見よがしにガシガシと窓を磨いてやった。
「見りゃわかんだろ。磨いてるんです」
「へえ、そういう発想なかったわ」
「不潔」
ぼそりと呟くとぴかぴかになった窓に皇が映っていて、月人は振り返った。
なんだよ、と文句を言ってやろうかと思ったのだが不意にぐらりと視界が揺れて蹌踉てしまう。
咄嗟に窓枠に腕を引っ掛けたが、ちゃんと立てそうにない。
「おい、大丈夫か?」
皇が呆れたように顔を近付けてくる。
ふわりと良い香りが漂って、月人はずるずるとその場に座り込んでしまった。
動悸がする。息苦しい。
でも無様な姿を見られたくなくて、月人は顔を逸らした。
「....なんでもない、から..あっち行けって」
「見え透いた嘘つくなっつーの。なんか今日変な力使ったろ」
「は...?使ってないし...」
頭がぼうっとなってきて、月人は彼に助け起こされる形で立ち上がらせられ、ずるずると部屋へと引きずられていった。
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