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ホームレス美少年 5

高校というところはかなり丁度いい。 月人の年齢は人に比べれば遥かに上だが吸血鬼でいうところの高校生ぐらいの年齢なので、あっているといえばあっているのだろう。 勉強もちょろいし動かしやすい大衆意識にいい感じに汚染されているし 魔法を使ってうまくやり過ごすには丁度いい。 時代から取り残された自分達化け物は、 寿命尽きるまで暇潰しをして生きていくのだ。 学校に着くや否や数人の女子が駆け寄ってきた。 「おはよう月人くんっ」 口々に声をかけられて流石俺!と自信を更に取り戻す。 そう、俺は魔法なんかなくたって、モテる!!!! わざわざあんな長髪野郎の血なんか飲まなくたってその気になれば上質な美少女の血が手に入るのだ。 今は食欲は抑えられているため平気だけどな。 そう抑えられているからだ! 「ねえ今日帰りヒマ?」 「ちょっと抜け駆けしないでよっ」 テンプレな会話がなされ、普段なら魔法プラス魔性の微笑み一つでいなせるのだが今はそうもいかない。 「悪いけど忙しい...んだよね...」 そう呟くと、ええー!と不満の声をこぼされ 思わず、ご..ごめん、と謝ってしまった。 すると女子達は意外そうに目を開き、今まで言い争っていた2人は顔を見合わせている。 「なんか月人くん最近丸くなったよね」 「そうそう。前はツンって突き放されてたし、 なんか1人で遠くにいるみたいな感じだったのに」 女子らの言葉に、月人は内心焦ってしまって思わず下を向いた。 魔法が解けてきたからだろうか。やばい..。 「勿論クールな月人くんも好きだけど、今の方がなんかいいかも」 「でも待って...もしかして彼女できたとか...?」 「それは許せないんですけど!?」 「いや...居ないよ..」 勢いのある彼女達をなんとかいなしながも、 今の方がなんかいい。という言葉に胸がざわついていた。 月人が高校にいるのは、別に人と触れ合いたいからではない。 人間の世界で人外の者が生きていくのはやはり大変で 魔法を駆使し、食欲抑制をし捕食しなくても生きていけるような体にしたり 記憶操作などで無理やり辻褄を合わせ、それなりの立ち位置を維持し不都合なものは全て排除し また必要なものは捏造したりして 試行錯誤を重ねてようやく手に入れた平和な生活スタイルがこれだっただけだ。 だから高校生らしい青春だとか、友達とか、それこそ恋人だとか そんなことを考えたことはなかった。 所詮自分は吸血鬼で、分かり合えるはずもなければ馴れ合う必要もないから。 死ぬまで平穏無事に完璧に過ごせればそれでいい。 それなのにあいつに出会った時から、ずっと怒りっぱなしで この完璧でなに不自由のない平和な数百年が嘘みたいに、上手くいかないのに なんで俺は翻弄され続けているのだろう。 教室で初めて隣の席のやつの顔をマジマジと認識し、 会話し、笑いあって。 そんなことをしたのは初めてだった。 それが妙にむず痒くて、怖いような気さえした。

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