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極上ノ餌 3
「口開けろ」
唇に何かが触れ、月人は首を振った。
「なんか介護してるみてーだぞ」
「誰が介護じゃ...っん」
ついツッコミを入れると口の中に何かが入ってきて、月人は目を開けた。
彼の顔が近くにあり、眼鏡の向こうの黒い瞳がじっとこちらを見ていた。
口に侵入したのは彼の指で、何かを探るように口腔を這っていた。
やがて牙に指が当たり、そこから甘い液体が溢れた。
濃厚な液体、その味が舌に絡み付き喉を滴っていった。
「う....、ん....ッ」
身体中に力が漲るような感覚に襲われ、
月人は彼の腕を掴み指から流れる血を舐めていた。
頭の中が、その甘い香りに満たされていて
また何も考えられなくなっていったのだった。
月人は起き上がって、彼の腕を掴み袖をまくって白い肌に噛み付いた。
「...っ、痛...」
白い腕から赤い血が溢れ出し、口の中へと流れ込んでくる。
体の奥底から満たされるような感覚に、
もっともっとと本能が求め、彼の身体を抱き寄せた。
「...っ...不味いんじゃ、なかったの....」
乱れた呼吸の隙間で呆れたように皇が呟いた。
その声にさえも身体が求めるように勝手に彼の髪に指を絡めていった。
「....美味いよ..」
「.....あ、そう...?」
「もっと」
彼の髪を掻き上げ、耳朶を甘噛みしてやがて首筋に唇を這わせた。
俺の、極上の、餌。
今腕の中の存在は、そんな素晴らしいものへと変換され甘美な衝動に突き動かされ肌に牙を立てた。
「...ッい、....っ..」
甘く、濃厚な液体は止め処なく喉へと伝い
無我夢中で食み続けていた。
腰に腕を回し、腕を掴んでいた手を掌へと滑らせ指を絡ませた。
段々皇はぐったりとこちらに身体を預けるようになり、されるがままであった。
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