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極上ノ餌 4
飢えが満たされてくると、
靄がかったような思考が晴れてくる。
事の重大さに気付き、月人はようやく彼の首から口を離した。
ああ、またやってしまった。
満たされた幸福感と莫大な後悔がのしかかり、
月人はそのままの状態で呼吸を繰り返していた。
申し訳ないという気持ちと嫌だったのに無理矢理、という気持ちで
頭の中がぐちゃぐちゃで泣きそうだった。
どうしてこんな気分にならなきゃいけないのか。
「...ん...、はぁ...」
皇の熱っぽい吐息が耳元で聞こえ、眉根を寄せた。
「...へんな、こえ...出すなよ...」
「......お前が、変なとこ触るからだろ」
「は?」
月人は目を見開いて今の状況を整理した。
腕は皇の腰を抱いていて、更にもう片方は彼の手としっかり恋人つなぎになっていて。
そしてベッドの上である。
なんの声も発せず腰を抱いていた腕を引っ込めると、うわー、と皇はベッドに倒れてしまった。
彼は倒れたままこちらを見上げては妖艶に微笑んだ。
「.........えっち」
その呼吸音の隙間の声に、月人は更に目を見開いた。
えっち?エッチ?H?
バカ言うな月人さんだぞ。
完璧無敵な月人さんだぞ。
月人はみるみるうちに頭に血が昇り思わず立ち上がった。
「は!?バカ言うなし!!!?」
莫大な羞恥心でいてもたってもいられなくなってしまい、
奇声をあげながら月人は外へと飛び出したのであった。
そんな哀れな吸血鬼の後ろ姿を見送り、皇はくすくすと笑った。
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