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魔界カラノ使者 4

その瞬間、勢いよくガラスが割れ 突風のような風が店に吹き込んできたのだ。 「見つけましたわ、皇さまぁ」 甲高い女の声が響き渡り、月人は振り返った。 ご丁寧にカーテンまで閉めていたにも関わらず、 店の入り口はぐちゃぐちゃであった。 黒いローブを着た人々が数人、破壊された入り口から中へと入ってくる。 全員目深くフードを被っていたが、それが"人でない何か"だとすぐにわかった。 「おーおーよくもやってくれたな。話聞いてなかったのか?」 「勿論。つまりこのお店がなくなればここにいる理由もなくなるというわけでしょう?」 どこからか再び甲高い声が話しかけてくる。 それがどれなのかはわからないが、皇は月人の横を抜けて彼らの前に立ちはだかった。 「帰らない」 「困りますわ」 「俺は困らねーん...だよ!」 皇が叫ぶと同時に、黒いローブの集団の何名かが突然苦しみ始めた。 膝をついてしまう者もいる中、真ん中にいた人物が何もない空間からピンク色のステッキを取り出す。 「まだそんなもん使ってんのか、ヒヨッコ」 「...っあなたがくれたものですもの!」 さっきから喋っていたのはそのステッキを持った人物だったらしい。 くるくるとステッキを振ると、店の中で風が起こり次第にその威力は増していった。 棚に並ぶ本たちがバサバサと音を立てて舞い上がる。 「相変わらず蛭のよーにしつけー女だな」 呆れたように皇は呟き、片手で空中を切った。 ピタリと一瞬風がやんだが、黒フードの人物は負けじとステッキで空中なぞっていた。 月人には一体何がなんなのかわからなかったが、 これが上級魔法使いたちの戦いなのかもしれない。 「おのれ...皇...」 「調子に乗りおって」 先程から悶え苦しんでいた他の連中達がぼそぼそと呟きながら両手をこちらに向けてくる。 何かをする気だ。

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