38 / 66

魔界カラノ使者 5

反射的に皇に駆け寄ろうとしたが、突然体が引っ張られ 月人は黒いローブの集団の一人に捕まってしまっていた。 「この使い魔どうなってもいいのか!?」 耳元で怒鳴られ月人は呆気に取られてしまった。 首元には原始的な人間の武器、ナイフが当てられさながらドラマのようだった。 なんだこれ?この俺が、この俺がまさか、人質??? 「..お、おいふざけんなよ...俺を誰だと...」 「マッジで!?!超ウケんですけど」 案の定皇は大爆笑し始めてしまった。 月人は顔面に血液が集中していくのを感じ、わなわなと震えた。 「月人くん...っ、捕まっちゃってるじゃん....あー涙出てきた」 余裕そうな皇にナイフを持つ手に力がこもっていく。 いくら魔女の集団とは言え捕まってしまうとは一生の不覚である。 使い魔と言われたことも腹が立つし、何より皇の足手まといになっているのが1番嫌だった。 「離せこの野郎...!!!」 月人は両腕に力を込め、魔力を集中させ後ろに立つ人物を吹き飛ばした。 店の外に放り出された仲間に、一同は一瞬どよめいた。 「さすが、皇さま..生半可な使い魔は使ってないようね」 「使い魔じゃねェェェ!!!!」 怒りにキャラを忘れ半狂乱で叫んだ月人であった。 不躾な魔女集団を皇諸共吹っ飛ばしてやろうかと魔力を集中させた。 しかし次の瞬間月人の身体は人形のように軽く持ち上がり、天井に叩き付けられ 重力に従い再び床に戻される。一瞬の出来事に、痛みを思い出した頃には顔もあげられないほど重い魔力が店の中を飛び交っていた。 「あなたほどの魔女が、どうして人間ごときに...!」 「うるせーなぁ関係ないだろ」 皇の声が低く怒っているようだった。 月人は決死の思いで地面に這いつくばったまま顔を上げた。 魔力の強大な力に砂嵐の中にいるような気分だった。 「放っといてくれっつの。マジで」 凄まじい形相の皇が片手を軽くあげると、魔女集団が次々に苦しみ始めた。 空中で何かを掴むように指先を動かし始めると地面に倒れるものや襟首でも掴まれたように宙に浮かぶものもいる。 劣等生なんて嘘だろ。 月人は呆然と彼の姿を見上げた。 絶対に逆らえないような強大な力を有した者がそこには立っていた。 恐怖、それと同時に月人の胸の中には妙な蟠りが沸き起こる。 「ふふ...やっぱりすごい力ですわね...皇さま...!」 ステッキを両手で握った女が嬉しそうに笑っていた。 「やはりあなたは魔界に必要なの...わたくしにも...!」 「その口閉じろよヒヨッコ」 「いいえ閉じませんわ!あなたが戻ると言うならわたくしはどんな手をも使います。 いいんですよ?わたくしを殺しても。 それともあのさゆりとかいう人間に説得していただくのもいいかもしれませんわね」 「は...あ..?」 ぴくりと皇の瞳が細まり、極寒のように空気が凍りついた。

ともだちにシェアしよう!