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赤く、花のような殺人鬼 1

あー。俺死ぬのかな。 昔から、頭が空っぽなことは自分でも気付いていた。 何をやってもうまくいかない、ぐらいに 捻くれられればよかったけど それすらもできないほど空っぽだから 今みたいにめちゃくちゃに痛め付けられて、 冷たくて硬い鉄の棒に括り付けられて いよいよ火炙りにされるって時でもそんな風に他人事だ。 「まぁ、確かに相手はろくでもないやつらばかりとはいえ いくらなんでも殺しすぎたな」 暗い視界の中呆れた声で詰られ、ツツジは俯いたまま首を横に振った。 日の一切差し込まない部屋は地獄のように寒くて、 窓がないはずなのにどこか冷たい風が吹いているようで薄気味の悪い空気だった。 「だから…ぁ、殺してないって…」 「証言は腐るほどある。 お前の前で何人も首が吹っ飛び、細切れになり、手足が捻じ切れ、 例え命があっても精神に異常が来している。 確認が取れているだけでも32名だ。 これでどう言い訳する」 ツツジはため息を零しながら、目だけチラリと目の前の男を見た。 「言い訳って…俺にそんなこと出来るわけないじゃん そりゃ、ちょっと喧嘩?みたいになったりもしたかもだけど 俺は殴り返してもいないし」 「反省の色もなし、と。救いようがないな」 男は手元の書類に何かを書き足し、心底嫌悪したような瞳でこちらを一瞥すると 背を向けてさっさといってしまった。 暗い部屋で一人取り残されたツツジは足元に積まれているよく燃えそうな木々を見下ろした。 大罪人は拷問の末火炙り、別に知らないわけではなかったが まさか自分がこうなってしまうとは夢にも思わなかった。 個人的には善良であろうと心がけていた、 どんなに育ちが悪くても環境が劣悪であろうとも 頭が足りない割に真っ当に生きようとしていたのに。 「知ってるか?巷ではお前のことを天才殺人鬼と崇拝する輩もいるそうだぞ。 瞬間的に人を残虐に殺められる、神のような存在だとな。 全く、世間の風紀まで乱すとは」 どこからか声が響いてくる。 焼け死ぬ様を見るための監視窓か何かから話しかけているのだろう。 傷だらけの背中に背負わされた鉄の棒もまた、お前などを救うわけがないだろうというように冷たく突き放すようだった。 「……殺したいと思ったことなんか、一度もない」 ツツジは掻き消えそうな声で呟いた。 天井が開く音が聞こえ、ばしゃりと上から液体が降り注いだ。 吐き気を誘発させるようなオイルの臭いが充満して、 顔を拭いたかったが肢体は言うことを効かない。 本当に死ぬんだ。 流石のツツジもいよいよ怖くなってしまい、震えながら鉄の棒に縛り付けられた両手を握り締めた。

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