123 / 162
痛みの中で 7
「いつも…俺を、守ってくれてたんだよ、ね…、」
いつも人が死ぬ時は、自分が危険な目に遭っている時だ。
この力は何も悪くない。
ただ守ろうとしただけだ。
悪いのは弱い自分だった。
ツツジは我慢していたがつい涙を溢れさせてしまい、その涙を乾かすように暖かい風が頬を掠めた。
「おい何をしている!早く火をつけろ!」
「この忌々しい化け物を焼き殺せ!」
「そ、それが何度火をつけようとも風が、邪魔をして…!」
男達が焦って声を張り上げている。
ツツジはやれやれとため息をついた。
「大丈夫、俺は平気…悲しくないよ。寧ろ誇らしい。
でもちょっとだけ疲れたんだ…そうでしょ?」
ツツジが呟くと風はだんだんと穏やかになっていった。
この風は自分の心に比例している。
自分の心そのものだったんだ。
その正体に、死ぬ間際にやっと気付いた。
ツツジはいよいよ思い残すことがなくなり、満足した心地で目を閉じた。
「ありがとう……もう、いいよね……俺……
がんばった…よね……」
全身が気怠くて、重くて、もうどこにも力を込められなかった。
ようやく火が運ばれてきたのか、恨みを込められたようにオイルを頭からかけられる。
ツツジはそんなことにすらもう何も反応ができず、
穏やかな気持ちでゼアレスのことを想った。
大好き。
ありがとう。
ともだちにシェアしよう!