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痛みの中で 7

「いつも…俺を、守ってくれてたんだよ、ね…、」 いつも人が死ぬ時は、自分が危険な目に遭っている時だ。 この力は何も悪くない。 ただ守ろうとしただけだ。 悪いのは弱い自分だった。 ツツジは我慢していたがつい涙を溢れさせてしまい、その涙を乾かすように暖かい風が頬を掠めた。 「おい何をしている!早く火をつけろ!」 「この忌々しい化け物を焼き殺せ!」 「そ、それが何度火をつけようとも風が、邪魔をして…!」 男達が焦って声を張り上げている。 ツツジはやれやれとため息をついた。 「大丈夫、俺は平気…悲しくないよ。寧ろ誇らしい。 でもちょっとだけ疲れたんだ…そうでしょ?」 ツツジが呟くと風はだんだんと穏やかになっていった。 この風は自分の心に比例している。 自分の心そのものだったんだ。 その正体に、死ぬ間際にやっと気付いた。 ツツジはいよいよ思い残すことがなくなり、満足した心地で目を閉じた。 「ありがとう……もう、いいよね……俺…… がんばった…よね……」 全身が気怠くて、重くて、もうどこにも力を込められなかった。 ようやく火が運ばれてきたのか、恨みを込められたようにオイルを頭からかけられる。 ツツジはそんなことにすらもう何も反応ができず、 穏やかな気持ちでゼアレスのことを想った。 大好き。 ありがとう。

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