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それまでの全て 7

ゼアレスは何が正解かわからなくなって、両手に力を入れた。 彼の細い首は簡単に持ち上がり彼は苦しそうに目を細める。 その姿にまた涙が溢れてきて、 躊躇する腕が逃げ出さないように縛り付けるのに必死だった。 「こんなことしかできないなんて」 彼の顔の上に涙が落ちていった。 「ただお前に笑っていて欲しかった… もっと、お前が喜ぶようなことを探して お前が安心できるように守ってやりたかった…」 なんて歯痒いのだろう。 どうしたら彼を救えたのだろう。 「こんなことしかできない私を…許してくれ…」 ゼアレスは泣きながら唇を噛み締め、更に力を込めた。 「…俺は、背負わせようとしてるのに…」 ツツジはそっと目を閉じて、 震えながら力を込めるゼアレスの手にそっと片手を重ねた。 「おじさん……言い残すこと、聞いて……?」 「…っ、言い残す、ことは?」 ツツジは小さく笑っているように口を歪めて、 震える手でゼアレスの手を包むように両手を重ねた。 「…ほんとは、 ほんとはね、 ここに…ずっといたかった…」 つ、と彼の瞳から溢れる透明の雫は 白い肌の上を滑っていった。 「ツツジ…」

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