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それまでの全て 6
「…だって、どうしたらいい…?
誰も殺したくなんかない……、この力だって本当は怖いよ…ッ!
だけど俺を守ろうとしてる…俺がこんな風に首を絞められて
殴られて蹴られて、怒鳴られて、死にたくないって思っただけで、
俺の罪が増えていって、またここに戻ってくる
どうしたらいいのかどれだけ考えてもバカだから何もわかんないし、
そんな自分を誰も守ってくれないから、自分で自分を守るしかなくて
なんで他の人間は当たり前に持っていて俺にはないのか
いつも羨ましくて、妬ましくて、
なりたくてもそうなれないくせに勝手に幸せになろうとして、
頑張ったりするそんな自分が
世界一嫌いで……しんじゃえばいいって…いつも思ってる…!」
彼の悲痛な叫び声に呼応するように、部屋の空気がビリビリと震えた。
冷たくて、ナイフのように鋭い風が二人の間を通り抜けていく。
「…力があるかどうかなんて関係ない、
お前がどうしたいか、を聞かせて欲しい
例えそれが叶わない事であっても、閉じ込める必要はないんだ」
「叶わないことを考えても、虚しいだけじゃん…」
「そうは思わない。
もっと別の形で叶えられるかもしれないだろ?
そのために誰かに話して、自分1人では出来ないことでも
誰かと手を取り合えば出来るかもしれない
そうやって考えていけることがお前が欲しかったものじゃないのか?」
もしかすると残酷なことを言っているのかもしれない。
無理に生きようと縛り付けることが、彼にとっては罪深いことなのかもしれない。
「……だから俺が、死にたいことを、
叶えてくれようとしているの…」
ツツジは虚ろな瞳でこちらを見上げてくる。
もう充分背負ってきた。こんなにも粉々で、今にも消えていきそうになるまで。
「そう、だな…お前が本当にそうしたいのなら…」
彼の上に乗り、彼の首に両手を置いた。
細い首はすぐにでも折れてしまいそうで、身体の芯が震えた。
「……もう、つかれたんだ………
どんなに争っても、逃げても、罪が俺を追いかけてくる、…」
人を殺す感覚というのは恐ろしい。
毎晩夢で魘されるに違いない。
「これでいいのか?お前はそれで幸せか?」
ツツジは何も抵抗しなかった。
一体どれだけの言葉を閉じ込めてきたのだろう。
彼は涙を溢しながら、目を逸らした。
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