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第28話

頬に置かれた手が、視線ごと僕の顔を持ち上げた。 ペリドットの瞳が瞬くのが見えた。 「あれは事故だ。事故だったんだ。」 ドクン… 蝶の青い羽ばたき。 灰色のリスのつぶらな瞳。 ”また、あいつ殺したのかよ!?” あの出来事の原因を知る術がなかったことを、知らずにいられることを、僕は密かに安堵していた。 本当のことを知ることは、とても怖かった。 ……自分のせいじゃないと、ずっと思い込んでいたかったんだ。 最初にここに連れてこられた日。 あの時、魔物の言った事を鵜呑みにはできないと思いながらも、その説明に納得している自分がいた。 でも同時に認めたくなかった。 耐えられなかったんだ。 自分自身が魔物達を死に追いやった原因だった、という真実を。 だからこそ余計に、彼の言葉を否定しようとしたのだ。 「っ……………」 そんな真実を直視できず俯き続けた弱い人間へ、慈雨のような言葉がしめやかに降ってきた。 「誰も知り得なかった。  お前も、他の人間も、召喚に応じた魔物達も…  私でさえ、これほど特異な魔力を持つ者が存在するとは、思いもしなかった。」 この魔物はきっと、僕がずっと罪の意識に苛まれていたことに気づいていたのだろう。 身に染み込んでいくような声を受けながら、そう思った。 「お前のせいではない。」 若葉を透かす陽光に似た瞳が、それだけがただ一つの真実であると告げていた。 暗闇を照らすようなその強い煌めきに、今だけは押し流されたかった。 彼の言葉をそのまま飲み込んで、自分の真実にしたくなった。 魔物はそんな僕を、ただ静かに見守っていた。 自室の窓の外には、夜の砂漠が広がっていた。 (黄色い花畑も好きだったけど、白い砂漠も綺麗だな…) 屋敷の周りの景色は、温室の出来事から数日後には様変わりしていた。 これもたぶん、僕の精神衛生への悪影響を領主様が懸念されたためだろう。 「………」 魔物が施工した劇的亜空間リフォームのアフターを眺めながら、僕は今日見聞きしたことを思い返していた。 魔力の保管容器、魔力の同質化、人間の魔力の保管兼増幅装置とも言えるこの亜空間… 薄暗い飼育室にいた希少種の数々、”自称・月桂樹の魔物”からの生態に関する証言、それに由来する研究動機や思想… そして。 「絶滅するはずだった、翡翠蝶…か」 今日だけでかなり多くの情報を、しかも比較的信憑性が高そうな情報を得ることができた。多すぎて知恵熱が出そうなくらいだ。 だが今のところ、「人間の世界を害する気はないし、それをさせる気もない」という魔物の言葉を裏付けるような材料はないままだった。 (結局、留まっても地獄、進んでも地獄な状況は変わらない…) どうすればいいのだろうか。 正しい答えがあるとは思えない。むしろ道が自分の前後で途切れているようにさえ思えてしまう。 「……………、」 あいつもあの時、こんな気持ちだったんだろうか…? 僕には―― いつも読んでいただき、ありがとうございます! これで投稿は終了する予定です。 作者は現在、本文完成に向けて、幻術と契約魔術に苦しめられているところです! ちなみにラストはずっと前から決まっています。 矛盾やご都合主義、便宜、妥協のない結末になっているはず…と作者は一人思っています。 完成したら、挿絵というか挿画像をつけ 電子書籍的データかサウンドノベルに近い形でBOOTH販売しようかと目論んでいるところです。 目途がつきましたら、画像サンプルとかをpixivイラスト(https://www.pixiv.net/users/78752497)で投稿する予定です。 作品品質向上のために、 感想や展開予想、「ここよく分からなかった」などの声をいただけるとうれしいです! 最後に、ラスト投稿までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

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