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第27話

「あの後にやって来た方の蝶…  あれは人工的に作った細胞に、お前の魔力を注いだ結果生まれたものだ。」 「っ!!?ぼ、僕の魔力を……?!」 「ああ。今までも細胞を培養し様々な生物の魔力を使って試したが、どうにも上手くいかなかった。」 そこでかなり薄めた僕の魔力を使ってみたところ、安定した個体を生み出せたのだという。 魔物はそれを達成感をにじませながら話してくれた。 (安定した個体を生み出せた…  ということは、あの蝶が生まれるまで不安定な個体、”失敗作”も生み出されていたって事だよな…) 楽しそうに追いかけっこをする蝶たちを目にしながらも、考えずにはいられなかった。 この光景を生み出すために、どれだけの命が積み上げられたのか、と。 成果は手放しに凄いと思う。 それに自分の魔力が役立ったことも、なんだか誇らしくも感じる。 でも、”失敗作”の蝶たちのことを考えると、手放しに喜んでいいのか分からなくなった。 「……、」 (人間だって動物実験を色々やっている。自分だって医療とかを受けることでその恩恵を受けている…) さっきの話だけで、白緑の魔物の倫理観が特筆すべきほど低いとは言えないのではないか。 まして、相手は魔物だ。人間の倫理観を押し付けるのだって傲慢だろう。 一人もやもやと考えていると、遊び疲れたらしい蝶たちが僕の方に戻ってきた。 そして、左右の肩で各々一休みし始めた。 (……今はまず、良かったことに目を向けておくか) 「…こ、これで絶滅は免れるんですね。」 気を取り直して、魔物の方へ振り返りながら聞いてみた。 しかし意外なことに、白い首は横に振られたのだった。 「いやまだだ。この2匹は両方ともオスだ。万が一のことを考えて繁殖は見送っている。」 「えっ、ど、どうしてですか?」 「この亜空間にできることは0に近いが、”歪み穴”が発生した場合、外に逃げられる恐れがある。  そうなった時、お前の存在が他に認知されかねないからだ。」 思いもよらぬところで、自分に話が繋がってきたのだった。 「ち、ちなみに…バレたらどうなりますか…?」 「…そうだな、魔界中の領主達が湿原へと攻め込んでくる……そういう可能性もなくはない。」 魔界随一の豊かな地が、火の海と化す―― (そ、そんな…、そんな事っ…!……) その様を想像し、足元が崩れ去りそうな絶望感に襲われた。 蒼白となった僕の顔を見て、魔物はため息をついた。 「そんな顔をする必要はない。  今のところ露見する可能性はごく僅かだ。  元々湿原内の情報統制は行っているし、私の研究施設からも痕跡が漏れないよう対策を徹底している。」 そう話しながら、魔物は白い手で僕の頬を宥めるように撫でた。 「そもそも、人間がこのような魔力を持つなど信じられない話なのだ。  だから、」

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