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【坂田店長と杉村達也の場合】

 俺の仕事は土木作業員で、毎朝早ければ夜は同僚と飲みに行ったりでわりと遅い。    そんな生活を送っていれば、職業柄疲れも溜まるし、今や慢性肩凝りと、腰痛。  まだ若いのにオヤジくさい悩みだと、自分でも思う。   ──そんなある日、同僚からいいマッサージ店があると聞いた。  従業員は若い人が多いのに、腕は皆いいらしく、個室ではないが、前後左右はカーテンで見えなくしてあるらしい。  そういういやらしい店じゃなくて、ほんとに普通の、だけど少し洒落た感じの店。    何しろ同僚からのお勧めだし、何度か通ってるみたいだから信憑性もあるってことで、一度行ってみることにした。    完全予約制のそこに電話して、予約してもらって、仕事帰りの作業着のまま、俺はそのマッサージ店へと向かう。    夜の7時すぎ。  教えてもらった場所に着くと、そこはごく普通のマンションの一室だった。  黒塗りの扉にはシルバーのネームプレートが貼りついていて、お洒落な英語の書体で店名っぽい文字が彫刻してある。 ……お洒落すぎて読めねぇけど……。  ていうか俺、ツナギのままだけど、別に場違いじゃないよな……?   「いらっしゃいませ」  心配になりつつ窺うようにドアを開く。と、茶髪でロングのきれいな女の人が笑顔で出迎えてくれた。    これ、おかえりなさいませ、とか言ってくれたら更にいいかも。違う店になっちまうけど。   「……えと、予約した杉村です」 「はい、杉村様ですね。では、こちらで掛けてお待ちください」  優しく微笑まれ、入口付近にあった白のソファに促されるまま座った。  やたらとケツが沈む……。ふかふかだ。    室内は全体的に白と茶で統一されていて、清潔感漂いまくりな雰囲気。  玄関先にはソファとガラステーブルが置いてあって、その少し奥には受付のようなカウンター。    もっと向こう側には、病院の大部屋みたいにひとつひとつカーテンで仕切られた空間が見える。    どこから流してるのか、うるさくない程度にジャズの音楽が聞こえて。  シンプルだけど、ソファの横にある観葉植物や、小物や家具、料金表のプレートすらいちいちお洒落だと思った。   「──お待たせ致しました、杉村様。こちらへどうぞ」 「あ、はい」  キョロキョロと物珍しげに室内を見渡していると、さっきの綺麗な女の人から声がかかり、ソファから立ち上がった。    この人がマッサージしてくれんのかな?  だったら職場のシャワー室でシャワー浴びといて良かった。  ……いやいや、別にいやらしい意味じゃなくて、汗くさかったら嫌だしさ。    誰にでもなく心中で言い訳していると、マンションの一室だ、すぐに目的の場所に着いた。    シャッと小気味よい音とともに女の人がカーテンを開けたかと思えば、そこには整体師のような、全体的に白っぽい格好をした若い男がいて。   「どうぞ、こちらへ、うつ伏せになって寝転がってください」  物腰が柔らかく、やたらと爽やかな若い男は、ベッドを指してそう言った。

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