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08:カラダは正直
「って、なかに服着てるんですか」
「……は? そりゃまあ、素肌じゃ気持ち悪ぃし……っひぁ!?」
び、びっくりした。変な声出たし……。
作業着のなかに来ていた黒のTシャツを、何の躊躇いもなく引っ張り出され、むき出しの脇腹を、あのザラザラした手のひらが這っていく。
どうしよう、どうしよう、ぞくぞくする。
止まらない手の動きは、浮き出た肋骨をなぞるように変わる。
くすぐったいとか、そんなんじゃなくて、触られたところから走るこの電気みたいな感覚は、明らかに、快感からのものだ。
「っあ、そんな、とこ……っ」
「……ここ、あまりいじったりしないんですか?」
最終的に、いたずらな指先がたどり着いた場所は、乳首。
きゅっと摘まれて、体温が一気に上昇した。
「しな、い……っう、ぁ…なんか、変……ッ」
「どんなふうに?」
キスできそうなくらい、顔が近くなる。
やつの声は透き通るように優しいのに、表情は意地悪っぽく笑っていた。
普段サドっぽくない人がそういう顔すると、ギャップでちょっと怖気づく。
だけど反対に、自分がどうしようもなく煽られていることに気づいて。
「っくすぐったい、から、やめ……っ」
「……こうしても、くすぐったいですか?」
何を思ったのか、作業着のなかに着ていたTシャツを肩の近くまで器用に捲られる。
それを虚ろに見ていた俺へ、兄ちゃんはいやらしく笑って、舌を出したかと思えば。
「っひ、やぁ……!」
ぺろり、と乳首を舐めた。
視覚的な驚きと、感触的な刺激に、びくんっ、と身体が跳ねる。
俺の反応を時々見ながら、兄ちゃんは舌先でちろちろと吸ったり舐めたりを繰り返しだす。
そんなところ、今まで執拗に攻められたことなんかなくて。
ぬるぬるした熱い舌に、むず痒いような感じがして、腰がぞくぞくする。
「っう、やぁ……ぁ、あ、ぁ、」
ゆるく首を振る。
抵抗って言えないくらいの、弱すぎる抵抗。
店内に流れているジャズの曲より、ぴちゃぴちゃと鳴るいやらしい音のほうが大きく聞こえて、羞恥を煽る。
俺、何やってんだろう。
普通にマッサージしに来たはずなのに、なんでこんな、初対面のやつに身体貪られてるんだ。
俺は俺で、何簡単に受け入れちゃってんだよ。
もっと、拒絶しなきゃいけないはず、なのに。
甘くも弱い愛撫に、少しだけ我に返ろうとしていた時だった。
「──……ッあぁあ!」
ガリッと勢いよく、小さな胸の突起を噛まれた。
当たり前に痛くて、びっくりして、何しやがるんだって意味で、俺は兄ちゃんを睨む。
「そんな顔しないで下さいよ、ちゃんとこっちも触ってあげますので」
「っあ、ちが、そういう、意味じゃ……っや、ぁあ!」
どう取り違えたのか、それともわざとなのか、やつはえろい綺麗な笑顔のまま、開いた作業着の隙間からパンツのなかに手を突っ込んだ。
待ち構えていた急な刺激に、背筋が一瞬仰け反る。
「っや、ぁ、あ……っ!」
焦らしに焦らされて、俺のそこは硬く反り勃ち、握られただけで先端から蜜を垂れ流す。
恥ずかしいのに、こんなこと、男として情けないはずなのに、嫌悪感はなかった。
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