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研修医くんがやってきた
5月。やたらと元気の良い新しい研修医がやってきた。
「今日から1ヶ月、小児科医でお世話になります青村瑛太です!よろしくお願いします!」
地味でメガネ率の高い研修医の中で短髪茶髪なだけで彼は目立っていたのに、その挨拶の大きさで集まってた医師と看護師には顔を覚えられただろう。
目立ちすぎだよ、あいつ使えんのかな、使えなかったらただの悪目立ちって言うんだよバーカ。
頭ん中で毒づいて、先生たち1人ずつよろしくお願いしますと言って回っていたアオムラくん?だったかな。が、俺の前にも来てよろしくお願いしますと言うから顔を合わせたら真っ赤になってアワアワしながら去っていった。なんだぁ、あいつ。
その理由は午前の診察と、午後の病棟回診が終わった後に明らかになった。
「橋本先生!一目惚れしました!結婚を前提にお付き合いしてもらえませんか?!」
更衣室で着替えを終え、いざ帰ろうと扉を開けたら青山だか青村だかが待ち構えていた。
辺りを見回しても俺以外見当たらない。
「はっ?俺?」
「そうです!今朝橋本先生とお会いした時に、こう、ビビビって感じるものがありまして!一目惚れって本当にあるんですね。俺、今は単なる研修医ですけど、研修終えて立派な医師になるつもりなんで、是非、お願いします!」
朝と同じく「お願いします」なんて台詞吐かれて、ん?朝はよろしくお願いしますだったか。懐かしのねる○んよろしく右手を差し出してきやがった。
はぁ。これもめんどくせ。
「セフレならいいけど」
「 はい?」
あーあー、予期せぬ言葉言われて頭バグった?固まってっけど。
「セフレならいいって言ったんだよ。俺恋人とかいらねーから」
「はぁ、セフレ…橋本先生はご自分の事俺って言うんですね、大丈夫です!俺そういうとこ偏見ないんで!」
こいつ、脳ミソ大丈夫?話噛み合ってねーけど。
「セフレってのはセックスだけするお友達って事だよ?俺が俺って言うのは男だから何もおかしくないだろーが。疲れてんだから帰りてーんだよ、そこどけよ」
「セックスだけするお友達……男……えっ!男?!」
「お前どこに目ん玉ついてんの?俺が今出てきたの男子更衣室だろうが!男・子・更・衣・室」
男子更衣室と書かれた文字を指さしてやったら、その文字と俺の顔をポカーンとした顔で何度も見比べてやがる。
「じゃ、そういう事だから結婚前提に他あたりな。研修医の青山くん」
「えと………」
その場から動けなくなってるらしい青山くんは置き去りにとっとと帰った。
自分で勝手に勘違いしてショック受けんじゃねぇ!170センチはあるし、スカートも履いてなかっただろうが。
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