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第4話勇者召喚

「マーリン、あの部屋だ。急ぐぞ」 二人は手元のランプを頼りに、薄暗い地下の通路を息を荒げながら走っていた。 地下通路突き当り、一つだけ黒い扉が見える。 レミウスはその扉の前に着くと、箱の中から鍵を取り出した。 「あ、開けるぞ……」 「は、はい!」 今まで誰一人と入った事のない部屋。建付けが悪いのか、扉はギギィと軋む音をさせながらゆっくりと開いた。 マーリンは埃っぽく真っ暗な部屋を、持ってきていたランプを使い照らす。 「レミウス様!こ、これは……」 「魔法陣か……」 六畳ほどの小さい部屋の床一面に大きな円が書いてありその中には魔術で使われているような紋様が描かれていた。 「これが魔法陣……僕、初めて見ました。レミウス様はご存じなのですか?」 「あぁ、我が家の書庫に保存してある魔法学の本に書いてあったのを何度も読んだことがある……」 二人が魔法陣を見ながら話し込んでいると、突然部屋全体が揺れるほどの大きな音が鳴り響いた。 「この音、大砲です!騎士団があれを使うまでに追い込まれるなんて……。レミウス様、急いで勇者を召喚しましょう!」 マーリンは泣きそうになりながらレミウスの服を引っ張る。レミウスはそんなマーリンの様子に覚悟を決めたのか、はぁ、と一つ息を吐くと箱からジェイダの血が入った小瓶を取り出し、そのまま魔法陣の中に入っていった。 魔法陣の中央まで進み、ジェイダの血を垂らし始める。 みるみるうちに、血は紋様に沿って勢いよく広がっていく。 「レミウス様!?何してるんですか……!」 「……国王よ、この為に私が必要だとおっしゃったのですね」 レミウスは、ぽつりと小さく呟く。 そのまま魔法陣の外側まで戻ってくると持っていた護身用のナイフで自分の手のひら勢いよく引き裂いた。 「マーリン、危ないから部屋の壁ギリギリまで下がっていなさい」 レミウスはマーリンにそう言うと手のひらからあふれ出した血を魔法陣の中に垂らした。 途端に魔法陣から金色の光が溢れあっという間に部屋中を眩しい光で包み込んだ。 「レミウス様っ……!」 マーリンがレミウスに向かって叫ぶも、レミウスはブツブツと呪文のような言葉を呟いていて何も答えてはくれない。 そうこうしているうちに、部屋中を包んでいた光が急に消え部屋は一気に暗くなった。 「レミウス様、どこですか!」 マーリンは持っていたランプを一番強い光に調節すると、よろよろと立ち上がり壁を伝いながら魔法陣が書いてあった場所にランプを照らした。 「レミウスさ」 「おい」 突然聞こえた声。その声は若い男性の声で間違いなくレミウスの声ではなかった。 マーリンは震えながらランプを声のする方に向ける。 「だれ?勇者?……どこ?」 「ここだ」 マーリンが持っていたランプが、ひょいと手から抜けると頭よりずっと高い所からランプが光った。 と、同時にさっきの男の声が聞こえる。 「おじいさんが倒れているんだが、……ここはどこだ?」 「ひぃぃぃっ……!」 ランプが照らしたのはマーリンよりはるかに大きい男。 突然現れたその大男にマーリンは悲鳴を漏らしたのだった。

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