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第6話いざ戦いへ
「申し訳ありません!勇者様に向かって大声をあげた上に、私まで助けてもらうなんて……。本当に失礼なことをしました」
半泣きになりながら何度も翔に頭を下げるマーリン。
ランプの光が部屋を照らす中、翔とマーリンは向かい合って座っていた。
翔は目が覚めた後、自分の横で倒れているレミウスを見つけ介抱している最中にマーリンと鉢合わせた。
その時、マーリンは余程驚いたのか翔に向かって叫んだ後、腰を抜かし倒れてしまったのだ。
「いや、俺こそ急に話しかけて驚かせてすいません。あと、勇者じゃなくて宮内といいます……あのここは東京ですか?」
「あぁ、ミヤウチ様!トウキョウとはなんでしょうか?ここはイブネリオ王国です」
ぱっと顔を上げたマーリンは焦ったように話し出した。
「時間がないので、かいつまんでお話します。まず、ミヤウチ様は今は亡き国王・ジェイダ様の血によって勇者に選ばれたのです。私はジェイダ国王の秘書をしていましたマーリンと申します。以後お見知りおきを」
「あ、あぁ……イブネ?ジェイダ?勇者?」
「詳しい事は後ほどお話します。今、この国は最大の危機が訪れています。この危機を乗り越えるにはミヤウチ様の力が必要なのです……!」
マーリンは翔の両手を自分の両手で握りしめ必死に懇願した。元々、自分も過去に危険な状況を警察官に助けてもらった過去から警察官になろうと決めた翔。目の前で助けて欲しいとお願いをするマーリンの願いを無下に断ることなど出来なかった。
「俺の力が必要とは……?」
「はい、今イブネリオ王国は魔族に襲われています。騎士団も必死に戦ってくれていますが死者も多数出ていて戦況はかなり不利です……。おまけに魔族の長・デビアスを倒せるのは勇者しかいないのです。どうか勇者ミヤウチ様この国の為、民の為共に戦ってくれませんか……このままではこの国が滅んでしまう」
ポロポロ涙を零しながら説明するマーリンが嘘を言っている様には思えなかった。部屋にいても伝わってくる振動や爆音が嫌でも非常事態が起きている事を認めざるを得なかった。
「俺に出来る事があれば手伝います。だけど自分が勇者だとは……」
「ここに来る前、何か神言がありませんでしたか?」
「……そういえば」
翔は思い出した。トラックに轢かれる寸前、光の輪が急に目の前に現れた時だった。
『勇者よ。お前が来るのを心から待っていた』確かに聞こえたその言葉。
「あれは神言だったのか……?」
独り言のように呟く翔を見たマーリンはホッとしたように微笑むと翔の後ろを指差した。
「あの剣は勇者様の持ち物でしょう?」
振り返ると竹刀袋が置いてあるはずのそこには金色に輝く長剣が置いてあった。
翔は困惑しながらも、その長剣をそっと手に取る。
その瞬間。
ーガシャー―ーン!!ー
先ほどまでの振動や音とは比較にもならないほどの衝撃が部屋に響いた。
「ジェイダ様が仰っていました。『勇者が長剣でデビアスを倒した』と」
マーリンは剣を掴む翔の手を力一杯握りしめた後、懸命に頼み込んだ。
「勇者様、どうかお願いします……」
その必死な表情に覚悟を決めた翔は唾をごくりと飲み込むと大きく頷いたのであった。
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