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第11話勇者の寝室で

勇者の寝室はいたってシンプルでソファやチェストなど必要最低限の物しか置いていなかった。 それだからだろうか、部屋の中央に置かれた大きなベッドが目立って見える。 「何人寝られるんだろうこのベッド。うわっすごいふかふかだ」 天蓋付きのベッドは4、5人は横になれるくらいの大きさだ。深い赤のシーツと枕カバーはシルクで出来ていて触り心地がたまらないほど良い。 ーー娼館もこれくらいいいベッドならいいんだけどな。 そう思いながら、ジュリは勇者を迎える準備を続けた。部屋の電気を消しベッド横にある間接照明に切り替え、持ってきたバッグから黒のベビードールを取り出す。黒のマントと着てきた麻の服を脱ぎ捨てるとそれを素早く身に着け、一番最後に鍵付きの革製チョーカーを首に取り付けた。 「別にどこ噛まれてもいいけど、項だけは守らないと。……さ、そろそろ来るかな」 マーリンが言っていた時間がだんだんと迫ってくる。 ジュリはふかふかのベッドにぴょんと飛び乗り横になると、滑らかなシーツを堪能しながら勇者が来るのを待った。 ーカタンー ドアの外から物音がする。 その音にジュリはぱっと飛び起きた。 ゆっくりとドアノブが回り部屋の扉が開く。 「わぁ、すごいオーラ。さすがアルファ……」 シルクのパジャマ越しでもわかるガタイの良さ、それになんと言ってもオメガだけが感じることが出来るアルファの匂いにジュリは思わずごくりと唾を飲む。 部屋に入って来た勇者はジュリの姿を見ると一瞬目を見張った後、大きなため息をついた。 「申し訳ない。マーリンさんかレミウスさんに言われてきたんだろう。申し訳ないが俺は付き合ってもいない人と……」 「まあまあ、そう言わないで勇者様。僕も別にお仕事で来ただけであって結婚したいとか恋人にしてってわけじゃないし」 そう言いながらベッドを降り勇者に近付く。お互いの顔がはっきりわかる距離まで近寄ると勇者の頬が真っ赤になったのがわかった。 ーーなんだ、貴族のオメガには反応しなかったらしいけど、これだけ強いオメガの香りには敵わないんだね。 ジュリはふふっと笑いながら勇者の服を掴むと自分の方へ引っ張った。 「僕はただの男娼だよ。勇者様をうんと気持ちよくしてあげるのが僕のお仕事。……さぁ、一緒にベッドにいこ?」 耳元でふぅ、と息を吹きかけ頬にキスをする。 その途端、勇者がぐぅ、と唸る。顔を見ると鼻息は荒く目は血走っていた。 ーーやばい。僕のフェロモンにラット起こしてる。 そう思った瞬間、ジュリの体がふわっと宙に浮いた。 勇者がジュリの体を横抱きにしたのだ。 そのままベッドに連れて行かれると勇者はジュリをベッドに放り投げた。ふかふかのベッドのおかげで何の痛みもなかったが、ジュリは内心焦っていた。 ーー勇者もう理性なくしてるじゃん!凄い圧だし、このままやられたら身が持たない! ジュリは上に乗っかってくる勇者の腕や胸を力一杯叩いた。 「勇者様!勇者様!ちょっと落ち着いてください!」 「はぁ……いい匂いだ」 ジュリの声が聞こえていないのか勇者は夢中でジュリの首筋に顔を埋める。 その行為はだんだんエスカレートしていき、ただ匂いを嗅いでいただけだったのが勇者はジュリのチョーカーを甘噛みし始めた。 「やめて!!」 大声で叫ぶジュリ。その声に理性を取り戻したのか勇者はハッと我に返ると眉根を寄せベッドの上で正座になった。 「す、すまない!こんな理性をなくしたのは初めてで。君を傷つけてはいないだろうか」 「あー……うん、大丈夫。僕がオメガで、勇者様がアルファなんだからしょうがないよ」 「……その、アルファとかオメガというのもこの世界にきて初めて聞いた言葉なんだ」 不安そうに目線をそらす勇者。だが、ジュリはその勇者のズボンが膨らんでいる事に気付いた。 「そっか、なら教えてあげる。オメガはね、アルファを気持ちよく出来るんだよ」 そう言いながら勇者のズボンにそっと手を掛けた。

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