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第13話一晩明けて
抱きしめられたまましばらく動けないでいると、ジュリの頭上からスー、スー、と寝息が聞こえてきた。
首だけ動かし勇者の方を見ると、ジュリを抱きしめたまま気持ち良さそうにぐっすりと眠っている。
ーー綺麗な顔……。背も高いし、体格もよくて、おまけにこんな男娼相手にも紳士だったし……。会ってすぐに勃起出来たんだからもう僕はお役御免な気がする。
ぼんやりと薄暗い部屋の中、そんな風に思いながらジュリは抱きしめられたままでいた。ショウの心臓の音と香りがジュリを心地よい眠りに誘う。この仕事を始めてもう何年も経つが、こんな風に自然に眠くなることは初めての事だった。
ーーちょっとだけ、ちょっとだけ目を瞑ったら起きないと……。
温かい腕に身を任せ、心の中でそう唱えるとあっという間に深い眠りについたのだった。
次に目を覚ましたのは、うっすらとカーテンの間から光が差している事に気付いた時だった。
元々、眠りの浅いジュリは少しの物音や光で簡単に目が覚めてしまう。
「あー、結構寝ちゃったなぁ……」
ふわぁ、と大きなあくびをし何度も瞬きをする。
しっかりと熟睡している勇者の腕を抜け出すの簡単で、小柄なジュリは身体を捩るとあっという間に勇者の腕をすり抜けベッドの端まで移動した。
よく眠れたからか、いつもより体がすっきりしている。
巻き付けられていたガウンを手早く解くと自分のベビードールが汚れてかピカピに乾燥している事に気づいた。
そのまま軽い足取りでソファまでいくと汚れている体を持ってきたタオルで拭き、来た時に着ていた麻の服に着替え、黒のマントを羽織った。
時刻は明け方の4時半、帰る準備が出来たジュリは最後にベッドで熟睡中のショウの顔を覗き込んだ。
昨夜の発情した姿とは違い、安心しきった寝顔に思わずふふっと笑みが漏れる。
「じゃあね、勇者様。早く好きな子みつかるといいね」
小声でそう囁き頬に軽くキスをする。
ーー勇者様の手、あったかかったなぁ……。
優しく撫でてくれた手のひらの感触を思い出しながら、ジュリはそのまま振り返ることなく『もう会うこともないだろう』と勇者の寝室を出たのであった。
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