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第21話ジュリの過去①

「僕の家族はね、もう何年も前の事だけど『少し貧乏だけど普通の四人暮らしの家族』だったんだよ。体は弱いけど頑張り屋なオメガのお母さんと、年の離れたベータの双子の弟たち。そして僕。お母さんは果物屋さんの仕事をしてて、弟たちは元気でやんちゃだけど家の事も手伝ってくれるとってもいい子たち……。小さい家で裕福な暮らしじゃなかったけど、でも幸せだったんだ」 昔を思い返すように遠い目をしながらジュリはポツリポツリと話し出した。 「お母さんね結婚はしていなかったけど、番がいたんだ。一回しか会ったことはないんだけど、ヒートの時期になるといつも家の前に馬車が迎えに来てて……その期間が終わるまでお母さんは帰ってこなかったんだ」 そこまで言うと、ジュリは唇を噛みしめ一度言葉を飲み込んだ。 「でも僕が18歳で弟たちがまだ9歳の時。……お母さんは番に捨てられたんだ。一方的な”番の解消”ってやつ」 「番がいなくなったオメガってどんな風になるか知ってる?精神的に病んじゃって……自分を傷つけたりしてもう家の中ぐちゃぐちゃだった。それでもヒートは来るからその間は弟たち連れて野宿もしたり……僕も自分のヒートがあったから、自分の事と弟たちを食べさせる事でいっぱいいっぱいだったんだよ」 顔を伏せながら話すジュリの膝には涙の染みがいくつも出来ていた。 ショウはジュリの手を握っていない方の手で、その華奢な背中をゆっくりと撫でた。片思いの相手の体に許可なく触れるなんてきっと良くないことだろうが、でもそうしないとジュリが今にも壊れてしまいそうで思わず手を伸ばしていた。 触れた瞬間、ピクリとジュリの背中が小さく跳ねる。だが嫌じゃないのだろう、そのまま身を委ねるようにショウの腕にピタッと引っ付いたのだった。 「だからかな……。3年前、ちょうど今日みたいに凄く天気がいい日だった。いつも通り、お母さんのヒートが終わるころに弟たち連れて家に戻ったんだけど……。お母さん、死んじゃってたんだ」 「後から知ったんだけどね。お母さん、その元番に貢いで借金してて……。それも結構な額。騙されてたんだろうなぁ……。もっと僕がお母さんの事ちゃんと見ていてあげればよかったんだ。なのに僕、僕は……」 「っ……!ジュリは悪くない。何も悪くないから」 ジュリが触れているショウの右腕がじんわりと濡れて冷たくなっていく。 今まで誰にも言えず溜め込んでいたのだろう、ジュリはショウの体に抱き着くとわんわんとそれはもう声を枯らしながら泣いたのだった。

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