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第85話決闘④

ー-ショウ、起きて!ー- ジュリの声が聞こえる。 目を開けるとそこは森でも天国でも地獄でも元の世界でもなく、ただ真っ白な世界だった。 体どころか指一本動かすことも出来ずショウは横たわったまま目線だけを動かした。 「夢、か……?」 ー-早く起きてよ!-- ジュリの声は聴こえるが姿も気配もしない。ただ、声が聴こえるだけだ。 「ジュリ?どこにいる?体が動かないんだ」 ー-大丈夫。ショウは立ち上がれるよ?……僕言ったでしょう?生きて帰ってきてって。 ショウは約束守ってくれるでしょう?ー- 「あぁ、そうだ。でも……すまない。どうやら約束は守れそうにないんだ」 ー-ショウは死なないよ。僕が待ってるんだから。僕だけじゃないお腹の子も、騎士団のみんなも、王宮の人たちも……みんな待ってる。だから、手を伸ばしてー- 「ジュリ……」 ー-僕を信じて。ほら、手を伸ばして……僕が連れて行ってあげるからー- 真っ白なだった世界から零れるような金色の光が降り注ぐ。 まるでこの光を掴め、と言っているかのように……。 「ジュリ!待ってくれ……!」 その光を掴もうと必死に腕に力を入れる。 だが、体は地面に張り付いたように固く、手を伸ばすことができない。 光の粒はだんだん小さく、そして数も減ってきている。 この光が消えたらもう、ジュリに会えなくなる……? 気が付けばショウの瞳には涙が浮かんでいた。 ー-なぜ生きるのを諦めようとした?ここまで戦ってきた理由はなんだ?ジュリと生きたいからだろう!この国を守りたいからだろう!まだ俺は死にたくない!ー- 「ジュリ!俺は死なない!手を……手を掴んでくれ!俺は戦う!」 腹の底から声が枯れそうなほどの叫び声をあげる。 その途端、ショウの体がふっと軽くなり腕も足も動くようになった。 光の中心、一番輝く方に向かって手を伸ばすとその瞬間、目が眩むほどの光がショウの体全体を包み込んだ。 ー--- 次に目を開けるとショウはあの戦いの場に戻っていた。 足はしっかり地面についている。刺されたはずの脇腹は傷跡は残っているもののもう血は流れていない。 「この光は……」 両手で構えている剣はあの夢で見たような光で包まれていた。 「お前っ……!どういうことだ。なぜ立ち上がれる!その光はなんだ!」 「俺を待っている人が俺をここに呼び戻してくれた……ただそれだけだ」 「ちっ……呼び戻してくれただと?ならもう一度死ね!」 デビアスは叫ぶと同時にショウに向かって駆けだした。 全身の力が漲る。 僅かな音や樹木の香り、風が体に触れる感覚も敏感に感じ取れるほど五感が研ぎ澄まされているのがわかる。 向かってくるデビアスの動きがコマ送りのように感じるほどに。 ショウは深く息を吐き出すと、目をこれでもかというほど見開いた。 ー-俺は必ず勝つ。必ず生きて君の元へ帰る。 ショウは重心を引くくし勢いよく駆けだした。 「うおぉぉぉっ……!!」 デビアスは目の前、ショウは雄たけびを上げながら金色の剣を振りかざした。 「くそがぁぁぁぁぁっ……!!!」 デビアスもそれに対抗するようにショウの喉元目掛けて剣を突き刺す。 コンマ一秒の差。 ショウの剣がデビアスの頭から縦真っ二つに切り裂いた。 それはデビアスの剣がショウの喉元に触れる寸前だった。 「んがあぁぁぁぁぁぁぁっ……」 デビアスは裂け目から黒い煙を出し断末魔のような悲鳴をあげる。 その黒い煙はみるみるうちに炎に変化し、やがてデビアスの体を包み込みながら燃えだした。 ー-嫌な、予感がする……。 敵を倒した。 それなのにさっきから胸騒ぎが止まらない。 ふと、振り返ると後ろには倒れたままのネイサンの姿があった。 「ネイサン……!!」 名前を叫ぶと同時走りだし、ネイサンの体に覆いかぶさる。 その時だった。 地鳴りのような重低音を感じたと思った瞬間「ドンッ」という大砲のような爆発音が空に響いた。 目を開けるも真っ赤な光で前が見えない。 「ネイサン、お前も生きて帰るからな」 生きて帰る、二人とも必ず。 意識が戻らないネイサンを守るようにしながらショウの意識はそこで途絶えた。

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