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第84話決闘③

甲高い金属音が幾度となく森に響く。 一体どれだけ時間が経ったのだろうか。 ショウとデビアスの戦いは膠着状態が続いていた。 二人の力の差は互角。 初めは押されていたショウだったが、目の前でネイサンの腕が切られてからというもの突然何かに目覚めたかのように集中力が増し、デビアスの攻撃を避けれるようになっていたのだ。 「はっ!どうした、急に動きが早くなったじゃないか」 「お前はっ……絶対、ここで倒す!」 「言うねぇ。でも……避けれるだけじゃあ俺は倒せないぞ」 デビアスはうす気味の悪い笑みを浮かべると剣に変形した右腕を空に向かって掲げた。 ー-一体、何をしているんだ? ショウは眉間に皺を寄せ、その不可解な行動を凝視した。 デビアスの黒い剣がみるみるうちに元の姿に戻っていく。 そして戻った手のひらを何度か握ったり開いたりした後、右手の人差しでショウを指さした。 黒い爪がぎらりと暗く光る。 「『ジュリ』と言ったか」 「……何がだ」 「お前の子を宿している人間だ。お前がそう呼んでいただろう」 「だからどうした。ジュリは関係ない!」 ショウの語気がより強くなる。 鋭い視線で睨みつけると、その姿を見たデビアスがにやりと笑った。 「それはどうかな……?」 そう言った瞬間、デビアスの黒い爪の先から黒い禍々しい煙が溢れ出て、蛇のように細く渦を巻き空に浮かんだ。 それはみるみるうちに大きな玉のような形になりデビアスが腕を天高く上げた瞬間、バチバチッと電流が流れるような音が鳴った。 「おい、それをどうする気だ……!」 ー-この剣でも受け止め切ることは出来ないだろうな。相討ちになるかどうか……。 少なくとも自分が犠牲になるのは確かだった。 「ジュリ、約束守れなくてごめん」そう心の中で呟く。 目を瞑ると浮かぶのは柔らかく微笑むジュリの姿。 ショウは覚悟を決めごくりと唾を飲み込むとグリップに全ての力を込めた。 「なに、先にそのジュリとやらを始末すればいいだけの話だ」 その言葉を聞いた瞬間、閉じていたショウの目が大きく見開いた。 デビアスが狙っていたのはジュリだったのだ。 ー-ここからジュリがどこにいるのかわかるのか? ー-ジュリが無事だったとしてもマルシャン村に危害が及ぶかもしれない。 色んな想像が頭に駆け巡ったが、「やめろ」と声を出す前に勝手に体が動き出していた。 止めなくては、今すぐに。 そう思い足裏に力を込め走りだす。 そして金色の剣をデビアスの腕目掛け振り落とした瞬間ー- 「あっ……」 「お前は本当に『ジュリ』とやらに弱いんだな。……こんな簡単なトラップにも気づかないなんてな」 熱い、そう思い視線を下げるとデビアスの左手がちょうどショウの脇腹を貫通していた。 ー-なんだ、これは……。 お腹の真ん中が焼けそうなほど熱い。 なんとか意識を保とうとするも手足が震え、あんなに力強く握っていた剣もその場に落としてしまった。 ずるり、とデビアスが手をショウの腹から引き抜くと赤黒い血が止めどなく溢れだした。 血が足を伝い、地面に血の水溜りができる。 ついに足腰に力が入らなくなったショウは崩れ落ちるようにその場に倒れた。

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