ショウがこの世界に転生してすぐ…… マーリンやレミウスに言われるがまま戦った時、すでにデビアスは雲隠れしたあとだった。 前王・ジェイダの血が選んだ勇者がこの世界にやってきたとわかったのだろう、デビアスは手下を置いて自分だけ逃げたのだ。 もしかしたらデビアスは自分が負けるとわかって逃げたのじゃないかー－？ そう思ったこともあったが、剣を交えた今それは自分の思い違いだと確信した。 ー－弱いから逃げたわけではなさそうだな……！！ デビアスは自身の両方の肘から下を黒い剣の様な形に変え勢いよくショウの頭に向かって剣を振りかざす。 ショウはその力の強さに歯を食いしばりながら受け止めた。 「そんなものか？　勇者様の力は」 「くっ……！」 鋭い金属音が響き、互いの剣から火花が散る。 デビアスの力は重く、鍛えられたショウの力でも跳ね返すことが出来ない。 デビアスはにたにたと厭らしい笑みを浮かべながらショウを追い詰める。 ー－くそっ……どうすれば……！ 一人ではこれ以上どう戦えばいいかわからない。 ショウの額には焦りと不安で玉のような汗が止めどなく噴き出している。 最悪の場合が脳裏に浮かび、ごくりと唾を飲み込んだ。 その時だった。 「うがぁっ……！」 目の前を一本の矢が疾風のごとく飛んでいったのが見えた瞬間、デビアスが苦しそうな声を上げその場で倒れこんだ。 見るとデビアスの左肩には王宮の紋章が入った矢が深く刺さっていた。 「ネイサン！」 「はぁ……ショウ、さま……、俺は、まだ、戦えます……」 デビアスに意識を集中させながら弓が飛んできた方向を見るとネイサンが片膝を付きながら弓を構えていた。 脇腹からの出血が酷いのかはあはあと息が荒く、今にも倒れそうだ。 ー－ネイサンも、もう限界だ。早くデビアスを倒さなければ。 デビアスが倒れている今がチャンスだ、そう思ったショウは金色の剣を再び強く握りしめた。 次の瞬間、倒れていたデビアスがむくりと体を起こした。 左肩に刺さった矢はデビアスが「ふっ……」と息を吹いた途端黒く焦げ、その場にぽとりと落ちた。 「はぁただの弓矢か……こんなもの俺に効くと思っているのか？お前は戦いの邪魔だ。黙って勇者様が死ぬのをそこでみてろ」 デビアスは何事もなかったかのように立ち上がると一瞬のうちにネイサンに近づく。 そして「ヒュッ……」と風を切る音と同時に黒い剣たネイサンの右手首を切り捨てた。 ぶちぶちぶちと嫌な音が辺りに響き渡る。 「うわぁあぁぁ……！！！」 断末魔のような叫び声とともにネイサンの手首から血が噴水のように噴き出している。 ネイサンの顔は引きつりその場で崩れ落ちた。 「ネイサン！」 「おっと？油断するなよ？」 さっきまでネイサンの方にいたはずなのにー－ 一瞬でショウの目の前に現れたデビアスは黒い剣をショウの喉元めがけて刃を突き立てようとする。 ー－カンッー－ 間一髪の所を鍔で受け止める。 「やるじゃないか！勇者様」 「お前との戦いも早くケリをつけたいからな」 「ははっ！じゃあ本気見せてくれるんだろうな？」 その言葉を皮切りにショウは地面を強く蹴り大きく剣振りかざした。