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岐路
『…どっちも本当の俺、です。』
秋山くんと食事をしてから二日。
あの日俺の質問にしばらく考えた後、秋山くんはそう答えた。
戸惑っているようにも見える表情にそれ以上何も聞けず…今に至る。
まるで違う人物みたいだった。
口調も、態度も…視線も。
あの時の俺を見ていた彼の眼差しを思い出す。
驚きもしたが…それ以上にゾクッとした。
いやいや、しっかりしろ俺。
俺も秋山くんも男だろ。ゾクゾクしてどうする。
もしかしたら、秋山くんの中に何かしらのスイッチがあって、それが切り替わった…って感じなのかもしれない。
だとしてもそのスイッチがどうして切り替わったのかは分からないけど…
あの日は結局全部奢ってもらい、そのまま別れた。
そして二日たった今日、休日ということで家で溜まっていた家事を片付けていた訳だけど。
携帯を片手にフリーズする俺。
画面には秋山くんの名前と番号。
このまま通話ボタンを押せば彼に繋がる。
素直に言えば、
声が聞きたい。
…会いたいと思う。
でも同じくらいに会うのが怖い気もする。
会えば何かが変わる。
それは予感ではなく確信に近い。
「あ~!クソッ!」
ウジウジするのは性に合わない。
俺は大きく息をつくと通話ボタンを押した。
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